未完成の新スタイル
スペイン代表は、ポルトガル代表戦で新スタイルとも言える「即時奪還からの速攻」をみせ、新たな時代の到来を予感させていた。しかし、チームが完成するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
先制点の場面では、敵陣でボールロスト後にフェラン・トーレスが瞬時にプレス。ペナルティーエリア手前でのパスカットからの速攻でゴールネットを揺らした。この攻撃は新スタイルがうまく機能した得点と言えるだろう。だが、この試合で新スタイルがハマったのはこの場面のみ。前線の選手はハイプレスを仕掛けてボール奪取後に速攻を狙っていたが、後続の選手が付いてこず、2枚目3枚目といった飛び出しがないため、シュートまで持ち込むことが出来ていなかった。
ボールロスト後のハイプレスは徹底されていた。ボールに近い選手が瞬時にプレスをかけ、敵陣で奪い返す場面は何度も見られた。問題は”速攻”だろう。カウンターを仕掛けるのであれば、アタッキングサードで強引にでも前線の選手が相手DFの裏に抜ける必要がある。しかし、これがまだ出来ていない。
21分の場面を見ればわかるだろう。スペイン代表は自陣でボールを奪うと、マルコス・ジョレンテが一気に駆け上がる。速攻を仕掛けるのであればここでフェラン・トーレスやアルバロ・モラタがダイアゴナルランで相手DFの背後を狙わなければいけないが、ただ並走するだけ。攻撃は止まってしまい、シュートまで持ち込めず、一度GKに戻してやり直すことになってしまっていた。
数的不利だったという点はあるが、速攻を仕掛けるのであれば、裏へ抜ける選手がいなければ相手の脅威とはならない。先制点の場面のようにゴール前でしか「即時奪還からの速攻」が行えないのであれば、引いた相手を崩す他の攻撃オプションが必要になってくるだろう。