世界基準を突き付けられた日本代表
最終的に0-1でタイムアップを迎えたこの熱戦は、日本代表にしてみれば確かに「善戦」ではあったし、見る者の感情を高ぶらせるような内容だった。長友も「今まで対戦した(過去4回の)ブラジル代表戦は手も足も出なかった。でも今回は手ごたえを持てた」とポジティブにコメントした。けれども、スコア以上に両者の実力差は大きい。それを5カ月余りで埋めるのは、本当に至難の技と言わざるを得ないだろう。
ただ、その領域に挑むしか日本代表には道がない。守備に関してはセレソンを苦しめるだけのものを見せられたのだから、それを自信にして攻撃面をブラッシュアップするしかないのだ。
解決策の1つは、長友が指摘した個の打開。伊東や三笘が相手を剥がす、あるいは強気で勝負師に行く姿勢をもっともっと出せるように周りもサポートしていかなければいけない。古橋や前田のようなスピード系FWの裏抜けが難しいのなら、コンディション次第ではあるが、やはり大迫の復帰も考えるべきだ。彼のようなターゲットマンがいれば、攻撃時の押し上げはもう少しスムーズになる。
もう1つはセットプレーの改善だろう。この日のブラジル代表は直接・間接合わせて20本のFKを獲得したが、そのたびごとにネイマールやラフィーニャら名キッカーが日本ゴールに脅威を与えていた。今の日本にはそこまで精度の高い選手がいないが、直接決められるキッカーを隠し玉として抜擢するのもありかもしれない。
「セットプレーは確実に改善しなければいけない。改めて思ったのは、シンプルに真ん中に入れてもそこは相当強い。ドイツもスペインも仮にニュージーランドだとしても強い。多くデザインしたものを持っていないといけない」と吉田も工夫の必要性を口にした。そういう部分も含めて詰めていくべきだ。
改めて世界トップ基準を突きつけられた日本代表にはやるべきことが非常に多い。6月シリーズの残り2戦で劇的な飛躍を遂げなければ本番には間に合わない。そのくらいの危機感を持って取り組んでほしいものである。
(取材・文:元川悦子)
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