鈴木優磨を諫める強心臓
加えて言うと、96年生まれは2016年リオデジャネイロ五輪世代の一番下。U-20やU-23を含めて日の丸を背負うチャンスが少なかった。今になって小川や鹿島の鈴木優磨、樋口らがJリーグで中心的存在になり、渡邊の前育時代の同期・坂元達裕も海外に移籍している。鎌田大地に至ってはヨーロッパリーグ王者になったが、彼らが遅咲きなのは世代的な問題もあるだろう。
この日、傑出した働きを見せた渡邊は後半15分に交代。試合は後半7分にディエゴ・オリヴェイラが加点し、鹿島の上田綺世に1点を返されたが、3-1の勝利の原動力となった。これまでのFC東京はディエゴ・オリヴェイラやアダイウトンら外国人選手、永井謙佑のような実績あるベテランの決定力に依存しがちだったが、新たな得点源が生まれればアルベル監督もチーム全体も楽になる。
16試合を終え、首位に浮上した横浜F・マリノスとの勝ち点差は6。指揮官は「直ちにタイトルを取ることを目標に設定したりはしない」とけん制していたが、ここから渡邊らのゴールラッシュが見られれば、一気に高みに上り詰める可能性もゼロではない。
「今日の感覚だったり、自分のいい感覚を忘れずにやりたい。前をやってる時は得点・アシストという結果が求められる中で、『自分で決める』という意識があれば、勇気と自信を持って蹴れる。そう思います」
こう語気を強めた渡邊。試合後にはペットボトルを投げつけた同い年の鈴木優磨を諫める発言をするなど強心臓な一面ものぞかせた。この男のさらなる覚醒が楽しみだ。
(取材・文:元川悦子)