WBの躍動が湘南ベルマーレに与える影響
「高い位置を取れとも、低い位置を取れとも言っていない。後ろとの関係性の中で誰がどういう状況にあるかを理解しながら、状況を見ながら判断できるようになったと思います。(ウイングバックには)あわよくば点と取るというのも求めているので、そういうところが(この試合で)出たのかもしれない」
この試合だけではないが、彼らの背後にいる杉岡大暉や山本脩斗との距離感もカギになっていた。ヴィッセル神戸戦の先制点は、石原が高い位置を取ったことで杉岡がミドルシュートを狙う間ができた。川崎戦でいえば、山本や杉岡がハーフスペースのいい位置に立ち、石原や畑が高い位置を取ることで、タリクや池田昌生、茨田陽生がポケットに走りこむ場面があった。
14試合で9点しか取れていなかったチームが、首位・川崎を相手に4点を奪った。攻撃のキーマンである岡本拓也を怪我で欠く湘南にとって、両ウイングバックの活性化は得点力不足の解消になるはずだ。
ただ、それだけでは、0-4などという大差にはならない。川崎にも原因があるのは明らかだった。
「自分たち主導というよりリアクションになってしまった」と山根視来が振り返るように、消極的なプレーが多すぎる。先制を許した場面は流れとは関係のないセットプレーだったが、そこで完全に意気消沈してしまった。谷口彰悟を出場停止で欠くJリーグ王者はボールを受けるのを怖がり、ボールロストを連発して失点を重ねた。
しかし、試合後にスタッツを見ると、予想外の数字が並んでいた。デュエル勝利数は51対29、空中戦勝利数は20対11と、大敗した川崎が大きく上回っている。ポゼッションロストも130対146で湘南が多い。試合を通して見ると、3点目や4点目をカウンターから決めたように、球際の部分では湘南が勝っているように見えたが、データは逆だった。(データサイト『SofaScore』を参照)
このデータを見て試合を見直してみると、あることに気づく。