ダービーマッチの真髄
61分には左SBに位置した明本から鈴木がボールを奪ってエリアへ突進し、アントラーズがリードを奪い返してもおかしくはなかった。だが鈴木はボールを上田綺世へ届けることはできず、突然訪れたチャンスは突然失われた。
その後はレッズも徐々に勢いを強め、かなり良い形でボールを持ちボールを動かすことができるようになっていく。相手の陣形を広げ、疲れ始めてきたアントラーズの選手たちが人数をかけてプレスを仕掛けるのを難しくしていた。
82分に松尾佑介が投入されると、不規則な動きや果敢なドリブルですぐに鹿島を悩ませ始める。だが出場10分後にはキャスパー・ユンカーへの折り返しではなくシュートを選択してクォン・スンテに阻まれ、勝ち点3獲得の絶好機を逃してしまった。
ユンカーはチャンスが消え去ったことに信じられない様子であり、また松尾の見せたリアクションも、自分が何をすべきだったのか十分に痛感しているかのようだった。その3分後には岩尾憲が味方のミスを帳消しにするかと思われたが、エリア手前から放った豪快な一撃はクロスバーを直撃。さらにユンカーもゴールを捉えかけたシュートを安西幸輝にブロックされてしまった。
2つのチームはどちらも決勝点を求めて奮闘し続けており、終了のホイッスルを聴きたがってはいなかった。それでも数秒後には西村主審が戦いの終わりを告げる。なるべくしてなった結末だった。
これこそがダービーマッチというものだ。
(取材・文:ショーン・キャロル)