凄まじかったのは…
先述したことからも分かる通り、ミランは前半で勝負を決めた。その理由として挙げられるのは、凄まじいプレス強度である。
アレッシオ・ディオニージ監督率いるサッスオーロは、ボールポゼッションを大事にする集団だ。これは前任者であるロベルト・デ・ゼルビによる影響が大きく、実際今季セリエAにおける平均ポゼッション率で、サッスオーロはナポリやインテルなどに次いで全体5位という高い位置につけている。
そのサッスオーロに対し、ミランはいつも通りハイプレスを仕掛けた。しかしその強度は、優勝を掴みかけていたことも影響しているのか、普段以上に凄まじいものがあったと言える。
7分には後ろ向きでボールを受けたマテウス・エンリケに対しサンドロ・トナーリがしつこくプレッシャーにいき、詰まらせたところでジルーがサンド。敵陣深くでボールを奪いきり、最後はラファエル・レオンの決定機に繋げていた。
その後ミランは3点をマークするのだが、これは全て相手のボールを奪ったところから生まれている。
1点目はマキシム・ロペスに対しラデ・クルニッチが寄せて外側に追い込んだところでレオンが詰めてボール奪取。そのままゴール前に侵入し、最後はジルーのゴールをお膳立てしている。
そして2点目は、深い位置でボールを持ったジャン・マルコ・フェラーリに対しレオンがプレスを与えボール奪取。そこからドリブルでボックス内に侵入し、またもグラウンダーでジルーの得点を演出したのである。
そして3点目。サッスオーロがGKコンシーリまでボールを下げると、ジルーが猛ダッシュでプレッシャー。そこからボールはM・ロペスに繋がるのだが、ここにクルニッチが詰めたことでまたも外に追い込む。この時点でトナーリ、レオン、そしてダビデ・カラブリアは目の前の敵を捕まえることができていたので、追い込まれたM・ロペスからすると逃げ場がない状態。そうこうしているうちにクルニッチがボールを奪いきり、右サイドを駆け上がったレオンにパス。そして最後はグラウンダーのクロスをケシエが押し込むことになった。
ボール支配を基本とする相手に対し、まずはマンマークで制御し、詰めたところで2人目が素早く反応し奪いきる。ミランのこの強度は、サッスオーロにとって脅威でしかなかった。
もちろんそれを可能にしたのは、前線の選手だけの頑張りに留まらない。最終ラインもしっかりと連動し、全体を間延びさせなかったことでサッスオーロを窮屈にさせた。実際、トモリとカルルの両センターバックは下がった位置でボールを引き出そうとするジャンルカ・スカマッカを何度も捕まえていた。
先述した通り後半はさすがにペースが落ちていたが、前半で3点を奪えればそれも大きな問題にはならない。最初の45分間におけるミランは、本当に最強だった。