3年前より事態は深刻?
ご存じの通り、酒井はハンブルガーSV(HSV)時代の16/17シーズン以降、毎年のように危機に瀕した。同年は何とか1部残留を果たしたが、17/18シーズンはブンデス参入時から守り続けていた名門の2部降格を阻止できなかった。そして18/19シーズンも1年での1部復帰の道が断たれ、サポーターから凄まじいブーイングを浴びせられた。
常勝軍団・バルセロナで栄光をつかんだイニエスタらとは違い、残留争いという修羅場の経験はチーム内では屈指。だからこそ、あえて苦言を呈し、厳しい言葉で味方を鼓舞し続けるのだ。
菊池は「ゴウ君が言ってることが全てだと思います」と沈痛な面持ちを浮かべたが、それをチーム全員で共有しなければ意味がない。「まだ大丈夫」「巻き返せる」という楽観が消えない限り、神戸が白星街道を突き進むことは極めて困難と言わざるを得ない。
思い返してみれば、酒井が日本に復帰した2019年夏も神戸は下位に沈んでいた。当時は失点数が多かったものの、ダビド・ビジャや古橋亨梧ら得点源もいて、今よりも前向きな要素があった。そこまでの道のりは険しかったが、最終的には残留している。
しかし、今は当時よりも深刻な事態に直面している。それを再認識することがまずは肝心だ。そのうえで、失点数を減らし、得点力をアップするしかない。大迫勇也ら前線アタッカー陣が負傷離脱している今、神戸はどう流れを変えていくのか……。
まずは酒井が3年前の後半戦で取り組んだように、チームの全体に厳しさを再認識させ、泥臭く這い上がる覚悟を持たせるところからやるしかない。ここで踏みとどまれるか否か。今、彼らは大きな岐路に立たされている。
(取材・文:元川悦子)
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