新体制への移行がスムーズに進んだ理由
結局、鹿島は3-1で試合をモノにしたが、絶対的エースが決めるべきところで決められるようになったのは大きい。鈴木優磨やアルトゥール・カイキなど他にも得点源はあるものの、上田という突き抜けた存在が新生・鹿島を力強くけん引しているのは紛れもない事実。ここからタイトル争いをしていくうえで、心強い要素となるだろう。
鹿島は11戦終わって勝ち点35。ここまで川崎と横浜に苦杯を喫しているものの、大崩れしない安定感と縦に速くなった攻めが印象的だ。ご存じの通り、今季はレネ・ヴァイラー監督がコロナ禍の入国制限で3月まで合流できず、岩政大樹コーチがチーム作りを請け負い、新指揮官にバトンタッチしたが、その移行が想像以上にスムーズにできている。
「レネ監督は初期段階で『ウェブやビデオを見ても、実際に指導しないと自分のやりたいことは落とし込めない。岩政に任せる』とずっと言っていました。来日後も無理に変えようとするんじゃなくて、うまく行ってるところは手を加えず、段階を踏んで自分の色を出していった。それがスムーズに進んでいる要因。レネ監督の日本人へのリスペクトと柔軟性が鹿島にとってよかったですね」と前任の鈴木満氏から強化部門を引き継いだ吉岡宗重フットボールダイレクターも手ごたえを口にした。
確かに今の鹿島は負ける気がしない。ACL組の状態にもよるが、ここで一気に勝ち点を重ねることができれば、タイトル奪回と常勝軍団復活は決して夢ではないはずだ。そのキーマンはやはり上田という最大の得点源に他ならない。彼には点取り屋として試合ごとに幅を広げ、スケールアップした姿を人々に見せつけてほしいものである。
(取材・文:元川悦子)