絶望的なチームを救ったのは…
60分に先制を許したユナイテッドは14分を最後にシュートがなく、45分以上シュートを記録していない絶望的な状況にあった。
それまでの試合内容を見てもこのまま勝ち点0で試合を終えることも十分に考えられたが、“エース”クリスティアーノ・ロナウドが失点直後の62分にチェルシーの隙を突く形でゴールを決め、試合を振り出しに戻すことに成功した。
何とか1つのチャンスをものにしたユナイテッドだが、試合を通じて攻撃は全くと言って良いほど機能していなかった。オーレ・グンナー・スールシャール前監督の下では圧倒的な存在感を放っていたブルーノ・フェルナンデスは絶不調に陥っており、直近数試合でコンディションを上げていたサンチョの欠場は痛恨だった。
サンチョの代わりに先発に抜擢されたマーカス・ラッシュフォードは79分までの出場でシュート、ドリブル、キーパス、タックル、インターセプト、クリアなど攻守におけるほぼ全てのスタッツで「0」を記録するなど存在感は希薄であり、試合のほとんどの局面で消えていた。(データは『Sofa Score』を参照)
前述した通り、怪我人が多いことが不調の要因の1つであることは間違いないだろうが、あまりにも攻守両面で機能不全だった。来季からの指揮官であるエリック・テン・ハフはこの試合を観てユナイテッドの選手たちに何を思ったのだろうか。
新指揮官が好む選手を今夏に補強をしたいところだが、CLはおろかこのままではUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得も厳しい状況となっており、今夏の移籍市場では昨夏のような立ち回りはできないことが予想される。アヤックスで数々の快挙を成し遂げた名将でも、名門の再建には時間を必要とするだろう。
(文:安洋一郎)