チェルシーに試合を支配された理由
前半からチェルシーペースとなった要因はユナイテッドの前線からのプレスが機能していなかったことにあるだろう。前線の選手がプレスをかけたとしても最終ラインの押し上げや縦関係にいる選手が連動してパスコースを消しに行くといった「連動性」がなかった。
特に厳しかったのがマーカス・ラッシュフォードとアレックス・テレスの左サイドだ。ユナイテッドのシステムが4-2-3-1であったのに対し、チェルシーはお決まりの3-4-1-2のシステムだった。3-4-1-2の「4」(リース・ジェームズ、ジョルジーニョ、エンゴロ・カンテ、マルコス・アロンソ)+「1」(メイソン・マウント)の5選手で5レーンを埋めるチェルシーの攻撃に対し、ユナイテッドは4バックのためWGの選手が守備に戻る、もしくはボランチの選手が最終ラインのサポートに入り、サイドバックの選手が大外のレーンまで出て行かない限りチェルシーの両WBがフリーでボールを受けられる嚙み合わせとなっていた。
チェルシーの最終ラインからのビルドアップに対し、ラッシュフォードは右CBのセサル・アスピリクエタに対して前線からプレスをかけるのだが、周りの選手との連動性もなく、強度も高くないためあっさりとプレスを回避されてしまう。テレスも前に出て右WBのジェームズを見ることができず、フリーとなったジェームズのクロスから何度もチャンスが訪れた。データサイト『Sofa Score』によるとジェームズは両チーム最多の10本のクロスと4本のキーパスを記録している。
ユナイテッドの守備の隙が多くあった前半だが、チェルシーはこうしたチャンスをものにできなかった。カイ・ハフェルツは2度の決定機を外すなど決定力に欠き、逆にユナイテッドは守護神ダビド・デ・ヘアに救われる形で前半をスコアレスで終えた。チェルシーも絶対的なスコアラーがいないという課題を露呈した。
だが、試合内容を見てもユナイテッドが失点するのは時間の問題だった。後半開始と同時にラッシュフォードとアンソニー・エランガのサイドを入れ替えるなど修正を行ったユナイテッドだが、60分にジェームズのクロスからハフェルツ→マルコス・アロンソへとボールが繋がり、チェルシーが試合の均衡を破った。
この時チェルシーの選手がボックス内に4人いたのに対し、ユナイテッドの守備陣は7人と圧倒的に数的優位だった。しかし結果は失点。ただボックス内に人がいるだけの守備であり、ボールを持っている選手に対しての寄せが甘いことで隙が生まれてしまった。