ペップ・バルサとクロップ・リバプールに共通するもの
そもそも、クロップ監督が率いるリバプールと、グアルディオラ監督が率いたバルセロナを構成する原理原則が、ある部分では同等であるから、今回のマンU戦の“バルサ化”を引き起こした側面もある。
両チームに共通するのは、ボールを失った時の振舞い方、つまり“即時奪回”を徹底するところだ。ペップ・バルサが持ち味とした“ティキ・タカ”の本質は、細かくショートパスを繋ぎ続けるところではなく、ボールを奪われたとしてもすぐに奪い返すところにある。“ティキ・タカ”は、ロスト時の守備を徹底するための陣形を整えるためにパスを繋げる側面もある。そうして“即時奪回”を徹底することが、必然的にボール支配率の高さに繋がっていく。
クロップ監督も、ボルシア・ドルトムントを率いていた頃から、“即時奪回”(ドイツ語で言うところの“ゲーゲン・プレッシング”)を、チームに徹底している。ボールを奪った後の攻撃の仕方に違いはあるにせよ、ペップ・バルサと共通する原理原則を有しているのだ。
よって、今回の試合ではマンUとの力関係で上回ることができたため、いつも以上に、この“即時奪回”の徹底と機能に繋がったわけだが、そのようなペップ・バルサと共通する“原理原則”を有していたがゆえに、リバプールは“バルサ化”したと言える。スタイルの相違はあるにせよ、クロップ監督が創り上げてきたリバプールは、根底では往年のペップ・バルサと繋がっているのだ。弱体化したマンUを相手に、伝説的なカタルーニャのチームと共通する“遺伝子”が浮かび上がったとも言えるだろう。
このように、“赤い悪魔”側の守備面の“戦術的統一のなさ”と、それに伴う自分たちの必然的な“即時奪回”の強化によって、リバプールはマンUを相手に“バルサ化”したのである。
(文:本田千尋)
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