並みのチームなら満足する状況でもレアルは…
アンチェロッティ監督の交代策が功を奏した、と言ってしまえばそれまでだが、前半の45分間で自分たちが「上手くいかなかった幾つかのこと」を的確に把握し、着実に修正することは、決して簡単なことではない。監督が修正点を選手たちに伝えて、問題点をチームとして共有するにあたって、ハーフタイムの15分間は思いのほか短い。
しかも、今回は難攻不落のサンチェス・ピスファンでのセビージャ戦である。リーガ屈指のクラブを相手に、短時間で問題を把握して「修正」し、かつ逆転という結果に繋げていく芸当は、確かに「レアル・マドリードにしかできないこと」と言って過言ではない。くどいようだが、今季のリーガで、レアルはセビージャ相手に敵地で逆転勝ちしている唯一のチームなのである。
何より、セビージャ相手にドローに持ち込むだけでは飽き足らず、あくまで貪欲に勝ちを狙ってゴールを奪いにいった行為こそは、「レアル・マドリードにしかできないこと」と言えるのではないか。
ナチョ・フェルナンデスが同点弾を叩き込んだのは、82分のこと。試合前の両チームの勝ち点差は12ポイントあり、その差を維持できるのであれば、そのままドローで終えたとして、何ら問題はない。サンチェス・ピスファンでドローに持ち込んで満足したとして、それに激高するファンは、さすがにいないのではないか。
しかし、あろうことか、“エル・ブランコ”の選手たちは、あくまで勝利を掴みに行った。並みのチームであれば戦果となるような敵地でのセビージャ相手のドローも、「レアル・マドリード」の選手たちにとっては、決して満足できるものではなかったようだ。そして実際にベンゼマが、ATに一撃を見舞って、勝ち越しに成功――。
このように並のチームであれば満足しかねない状況でも、あくまで勝ちに行き、実際に勝利をつかみ取った行動こそは、「レアル・マドリードにしかできないこと」であり、それが“王者たる所以”なのだろう。
(文:本田千尋)
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