ライン間を制したペドリ
前半のバルサは、なかなかニコが目立つことができず、フレンキーも含めて中盤でゲームを作ることができなかった。もちろんレバンテの守備組織がしっかりしていたこともあるが、特に敵のボックスの手前、ペナルティアークの近辺でチャンスを作ることができなかった。レバンテのブロックの中の敵の選手と選手の間、特に[5-3]の間の“ライン間”で、誰かがボールを受けてコンビネーションを構築することができていなかったのである。
するとボールはサイドに回ってしまい、守る側からすると、ライン際では数的優位を作りやすい。“ライン間”に鋭いタテパスを入れられて、ダイレクトで崩そうとしてくることに比べれば、心理的にも落ち着いて対処することができる。
この“ライン間”を制したのが、ペドリだった。
59分のデンベレのアシストをお膳立てしたのはペドリだったが、この19歳のスペイン人MFは、前方に走るスピードをアークの手前で緩めてフリーの状態を自ら作り出し、アルバからのパスを引き出す。そのボールを絶妙のトラップでコントロールすると、右のデンベレにパス。そこからオーバメヤンによる同点弾が生まれたのは、前述のとおりだ。
こうした“ライン間”でボールを受けるプレーは、前半のバルサには観ることができなかった動きだ。後半に入ってペドリが敵のブロックの中でアクションを起こすことで、バルサの攻撃にはダイナミズムが生まれたと言えるだろう。
64分に自らゴールを決めた場面でも、仕掛けたガビのマイナスの折り返しを受ける前のペドリのポジショニングを確認すると、やはり“ライン間”に留まってパスを受けている。東京五輪にも参戦したスペイン代表MFは、敵の9番のFWロジェールとレバンテの守備陣の“間”のアーク近辺でボールを受け、ダイレクトでシュートを突き刺した。シュートの技術もさることながら、その前のポジショニングにこそ、シャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタの遺伝子を受け継ぐ者としての真髄が現れている。
このように、ペドリが“ライン間”に立ったことで、バルサは逆転に成功したのだ。
試合そのものは、バルサの守備が不安定でPKを献上し過ぎてしまい、打ち合いのような格好になってしまった。終盤のルーク・デ・ヨングの仕事も大きい。だが、このレバンテ戦のターニングポイントは59分にペドリがブロックの“間”でボールを受けたことであり、その功績を踏まえれば、“ライン間”を制したペドリがゲームを制した、と言えるのではないだろうか。
(文:本田千尋)
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