進歩が見られない戦略
このスペイン人指揮官の招へいは、三木谷浩史氏にとって大当たりになりそうだと感じられた。リージョは、現在マンチェスター・シティで一緒に仕事をすることになったペップ・グアルディオラが「指導を受けた中で最高の監督」とまで言っていた男だ。ヴィッセルの“バルセロナ化”を結果に繋げるため、まさに最適な人選だと考えられていた。
だが結局リージョは、就任発表からわずか6ヶ月後にはクラブに別れを告げることになる。おそらくは、神戸にポゼッションベースのサッカーを根付かせ、高額補強に見合うだけのチームを作り上げることは不可能だと感じたのだろう。
問題の核心は、まさにその高額補強にある。より正確には、高額補強の無計画さだ。
ある特定の戦い方を信奉し続ける手法は、近年の川崎フロンターレでも、過去5年間のJ1で川崎以外に優勝を成し遂げた唯一のクラブである横浜F・マリノスでも、非常に大きな成功をもたらしている。だが神戸のやり方はそうではなく、いつか何かがうまくいくまでひたすら資金を投入し続けるかのようなものである。
たった一度の天皇杯優勝を別とすれば、今のところそのやり方で明確な進歩は生み出されていない。過去数年間、大物外国人選手や新旧日本代表選手らの銀行口座に驚くほどの金額を投入してきたが、2017シーズンの22試合を終えて11位という状況でネルシーニョ監督が解任された5年前と比べてみても、ヴィッセルがJリーグ優勝にそれほど近づいたとは感じられない。
実際のところ、数ヶ月ごとに目まぐるしく変化を繰り返すのではなく、柏レイソルで国内全タイトル獲得の経験もある経験豊富なブラジル人指揮官をもし信頼し続けていたとすれば、神戸の状況は果たして今以上に悪いものとなっていただろうか。
現在の順位表で両者の位置を見ていると、そうだとは考えにくい。
(文:ショーン・キャロル)
【了】