「今季は8番を背負った以上…」
予期せぬ苦境を打開すべく、川崎の鬼木達監督も後半スタート時に4枚代えを断行。流れを引き戻そうと躍起になったが、それをあざ笑うかのようにセレッソは後半23分に山田が4点目をゲット。すでに乾はジュアン・パトリッキと交代してベンチに退いていたが、狙い通りの展開にして満足感を覚えたはず。試合後のインタビューで「ほとんど自分たちのプラン通り。完璧に近かった」と満足そうにコメントしたのも頷ける。
最終的にセレッソは川崎のマルシーニョに一矢報いるゴールを献上したが、4-1の快勝。2020・2021年J1王者を粉砕し、彼らのホーム無敗新記録を阻止するという大きな成果を残すことに成功した。
「我々はボールを保持することからキャンプ以降、積み上げてきました。一番大事なゴールを奪う、相手の嫌がることを徹底する、それをグループ・チームで行うことを全員でデザインし、共有する段階に来ているのかなと思います」と小菊監督はチームの進化を実感している様子だ。
2月の開幕直後は攻撃に厚みが出せず、横浜F・マリノスに大苦戦するといった生みの苦しみもあったが、山田ら前線アタッカー陣が着実に結果を出せるようになってきた。いい方向に進んでいるのは間違いないだろう。
こうした中、乾のパフォーマンスが目に見えて上がってきたのも大きい。「今季は8番を背負った以上、得点・アシスト合計で15という数字を残してほしい」と指揮官から重責を託されているが、それを達成できそうな勢いも感じられる。そのためにも、ケガをしない体を作り、出場時間を増やしていくことが肝要だ。
彼の今季のJ1で先発した4試合を見ると、全て70分前後で交代している。フル稼働できれば、それだけ数字を残せる確率が上がるということ。34歳を目前にしているからといって、90分間走り抜けるフィジカルがないわけではない。乾ならばもっともっと高みを目指せるはず。カタールW杯を射止めるくらいの存在感を示し続けること。それを小菊監督もチームメートもサポーターも強く望んでいる。
(取材・文:元川悦子)