研ぎ澄まされる乾貴士の判断力とテクニック
【写真:Getty Images】
自陣深い位置でボールを奪った奥埜博亮のフィードが乾に通ったのが全ての始まりだ。加藤を経て、左の高い位置に上がった山中に渡ると、新背番号8はペナルティエリア内に飛び込める位置まで侵入。山中のパスがゴール中央の中原に通ったタイミングで、一気に裏のスペースを突いた。
次の瞬間、フリーでパスを受けた乾はGKチョン・ソンリョンと1対1に。真正面に立たれる難しい局面だったが、鋭い判断で股抜きシュートを選択。「ちょっとコースがありませんでしたけど、よく入ってくれたと思います」と本人も認める難しいフィニッシュを決め切ったのである。
ギリギリの局面での高度な決定力というのは、2018年ロシアW杯でも実証されている。2ゴールを決めたW杯から4年が経ち、「もう俺も今年、34ですよ」と乾は冗談交じりに言うが、長年磨きを上げた卓越したテクニックと冷静な判断力は衰えるどころか研ぎ澄まされる一方だ。
Jリーグ復帰によって世界最高峰の舞台からは離れたものの、10年がかりで体得した経験値はやはり本物。非凡な能力を目の当たりにすれば、森保一監督も代表に呼び戻したくなるのではないか。8カ月後のW杯をも期待させる2ゴールだった。
その後、セレッソは前半のうちに山田が加点し、3-0で試合を折り返す。ボール支配率は川崎を大幅に下回る34%、パス成功率も相手の68%と相手の83%には及ばなかったが、シュート数は倍近い9本を放った。