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吉田麻也「ルールを守ってからの次のステップ」。サッカー日本代表戦に集結した4万4000人は状況打開の起爆剤になるか?【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Getty Images

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吉田麻也
【写真:Getty Images】



サッカー日本代表戦に4万4000人超が集結

【日本 1-1 ベトナム カタールW杯アジア最終予選】

 カタールワールドカップアジア最終予選の最終戦が29日に行われ、サッカー日本代表はベトナム代表と1-1で引き分けた。



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 ホームの埼玉スタジアム2002には、コロナ禍の日本代表戦で最多の4万4600人が詰めかけた。まん延防止重点措置が解除され、スタジアムの入場者制限もなくなった試合に向けて日本代表のキャプテン吉田麻也は度々「6万人に集まって欲しい」と呼びかけてきた。

 26日に行われたワールドカップ予選突破を報告する記者会見の中では「なかなか予選を通してサポーターの前でプレーすることができなくて、僕だけじゃなくて選手みんなが寂しがっていました。まだ声は出せないですけど、次のステップとして6万人、たくさん集まって、みんなで勝って、もう1回、ワールドカップ出場をみんなでお祝いして喜び合いたいなと思っています」と語った。

 そのベトナム戦の前日にオンラインで取材に応じた吉田は、その場でも「会見で言ったとおり、選手たちみんな、満員のスタジアムで代表戦をやることに飢えているのはひしひしと感じている」と述べた上で、日本代表がスポーツ界の先陣を切って苦境を打開していくことの重要性を説いていた。

「ヨーロッパとか、この間のオーストラリアもそうですけど、明らかに日本と違うので、少しでもいい方向に持っていきたいなと思っています。そのためには誰かが突破口を開かないといけなくて。それが僕はサッカー日本代表であるべきだと思っているし、スポーツが次のステップを踏むためにも必要だけど、スポーツだけじゃなく、エンタメ、飲食業界も今我慢している状況で、誰かが扉を開かないといけないんじゃないかなと感じています。僕はそれがサッカー日本代表なんじゃないかなと思っています。

このままいくと、ずっと我慢していて、みんな苦しいだけ。みなさんもヨーロッパの各国のリーグを観ていると思いますし、アメリカのスーパーボウルのハーフタイムショーもそうですけど、全く違うわけですよ。入国に関しても、ヨーロッパとか、オーストラリアと比べて全く違うんですよね。本当に先進国なのかっていうくらいの差がある。改善しないといけない。

僕だけじゃなくてみんなが思っていることなんですけど、僕たちができることはサッカーで1つひとつ実績をあげていって、政府関係者の気持ちを動かしていくことしかできないので、まずはサッカーファミリーで、ファンも含めて変えていけたらいいなと思います」

 この思いが届いたのか、ベトナム戦当日のスタジアムには満員とは言わないまでも、4万人の観客が集まった。声出し禁止の中で日本代表サポーターも精一杯の応援でチームを支え、吉田は「日本人はルールを守るなぁと思いました」と感心する。

 しかし、一方では残念な状況もあった。試合開始前からベトナム代表サポーターが声を出しての応援をやめず、国歌も大合唱。試合中には場内アナウンスで再三再四「声出し」をやめるよう呼びかけがあったにもかかわらず、応援歌を歌うことや大きな声を出すことを止めなかった。

 英語や日本語での場内アナウンスは積極的に行われていたが、ベトナム語での案内が不十分だった可能性があるなど、主催側にも反省点はあるだろう。とはいえ観戦ルールを受け入れてスタジアムに入場しているはずの観客が、そのルールを守る姿勢を見せなかった、または「ルール」に対する考え方が違ったことで、風向きはまた厳しくなってしまうかもしれない。

 吉田も試合後のセレモニーで状況改善に向けたメッセージを発しようと考えていたというが、「今日のあれではちょっと話せない」と断念。「ヨーロッパやアメリカ、南米でも、オーストラリアでも、アフリカネーションズカップでもそうなってきているし、3回ワクチン接種して、例えば陰性証明を提示しての入場で規制を緩和するということも、次のステップなんじゃないか」という意見に変わりはないが、「ルールを守ってからの次のステップなので、今日に関してそこはちょっと僕からは言えない」と残念がっていた。

 ベトナム代表のパク・ハンソ監督が苦言を呈した日本入国時の厳しすぎる検疫や、スポーツ興行など大規模イベントの入場制限、あるいは開催制限、飲食店の開店時間短縮など、かつての日常を取り戻すためには様々な制限を取っ払っていかなければならない。

「スポーツ界、エンタメ界、飲食界、みんなが我慢しているところの突破口を開くのが日本サッカー界、サッカーファミリーだと思っているので、ファンのみなさん、メディアの皆さん、もちろん、協会、選手一丸となってこの扉をみんなで開けたらいいなと思っています」

 吉田の願いは届くだろうか。ベトナム代表サポーターの声出し応援が一般社会に悪印象を与えかねないが、4万人以上が集まった大規模イベントが終わっても新型コロナウイルスの感染拡大が起きなければ、日本社会に大きなインパクトを与える状況の変化のきっかけとなるかもしれない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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