クラブOBは評価。しかし…
結論から記すと、レンタル元へのアピールは“不十分”だったと言える。
久保は明らかに気合いが入っていたが、いつもよりドリブルが大きくなってしまったり、自分で何とかしたいという思いからか味方を使うタイミングが少し遅れたりするなど、その気合いがよくない方向にいってしまうことが多々あった。手数をかけない攻撃を強く意識していた部分もあるだろう、普段と比較すると攻め急いでいる印象も受けた。
ホセ・マリア・サンチェス・マルティネス主審が多少のコンタクトでは笛を吹かない傾向にあったので、その影響も多少は受けたが、久保はフィジカルで潰される場面も目立った。この日のポゼッションロストはヴェダト・ムリキに次いでワースト2位となる17回を数えている(データサイト『Sofa Score』を参照)。
もちろん効果的なワンタッチパスなど随所で光るプレーはあったが、やはりビジャレアル時代にも苦戦した左サイドは鬼門だった。左利きの久保はどうしてもタッチライン際でのプレーが基本になるので、なかなか良い位置でシュートに持ち込むことができない。事実、78分までの出場でシュート数は当て損ねたフリーキック1本のみ。左サイドから効果的なラストパス等送れればまだ良かったが、キーパスは1本でクロスの成功率は3本で0%と、決定的な仕事は果たせなかった。
試合後、マドリーOBで現在は同クラブの渉外ダイレクターを務めるエミリオ・ブトラゲーニョ氏が久保の成長に満足感を示すコメントを残したようだが、同選手の価値を下げないための、ある種のリップサービスと捉えた方が良いかもしれない。この試合で、マドリー陣営に感銘を与えたとは残念だが言い難い。
もちろんマドリーに戻ること自体は可能性が高いだろう。しかし、そこで出場機会を得られるかはまた別の話。現段階ではかなり厳しいはずだ。それが成長過程にある久保にとって良いことなのかは、難しいところである。
だが、まだまだシーズンは続く。日本の若きMFには引き続き、アピールしてほしいところだ。
(文:小澤祐作)
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