脅威だった両利きの天才
そんなチームにおいて輝きを放っていたのが、ウスマンヌ・デンベレだ。
右ウイングで先発したフランス代表FWはとにかくキレキレだった。21分にはカットインから芸術的なスルーパスを流し込み、F・トーレスのゴールをお膳立て。さらに27分には、鋭いクロスからオーバメヤンの得点をアシストした。後半は少し落ち着いたが、キーパスは両チーム最多の5本を記録している。シャビ監督が「ウスマンヌは違いを生み出すことができる。今日は特に良かった」と話した通り、そのプレーぶりは称賛されるべきものだった。
同ポジションを担うアダマ・トラオレには強引にでも縦に突破できる力があるが、やはり“パターン”という意味ではデンベレの方に分がある。ご存じの通り両利きのため、縦に仕掛けても中に仕掛けても高いクオリティーを維持できる。マッチアップする選手からすると、実に捕まえづらい存在なのだ。
それがよく表れたのが27分のシーンである。右サイドでボールを持ったデンベレに対しコテが対応したのだが、デンベレが左足に持ち替えた時点で強く寄せることができていなかった。理由は、その前にデンベレが深い切り返しで突破していたから。それと同じパターンを警戒し、コテはディレイしたのだ。
しかしデンベレは「来ないなら」と言わんばかりに左足で鋭いクロスを供給。結果としてオーバメヤンの得点をお膳立てすることになった。両利きのデンベレだからこそ、成り立ったものだと言えるだろう。
好不調の波が激しい存在で、オサスナ戦のようなプレーをどこまで維持できるかは正直なところ不透明だ。しかし、このキレを継続できるならば、他クラブにとってこれほど恐ろしいことはない。今後に注目だ。
(文:小澤祐作)
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