“総合力の高さ”の証明
クロップ監督の言うとおり「プレシーズンのようなものがない冬に」加入して、新天地で直ちに活躍するのは、ポルトガル→イングランドという環境面での適応も含め、決して簡単ではない。しかし、それをやってしまうのは、もちろんディアス個人の選手としてのクオリティが高いからに他ならない。
しかし、この事実は、何よりリバプールのスカウティング部門の能力の高さの証明でもあるだろう。つまり、選手たちだけでなく、フロントも含めたクラブ全体でクロップ監督が嗜好するサッカーのコンセプトを共有し、そのスタイルを、“選手獲得”も含めてパフォーマンスとしてピッチ上に落とし込めている、ということだ。
リバプールのスカウティング部門は、ポルトにリバプールのスタイルでプレーしている選手がいることを発見し、実際にディアスはアンフィールドにやってきて期待に応えている。加えてこのコロンビア代表FWは、複数のコンペティションを戦う上での貴重な戦力となり、フロントスリーの一角としてローテーションの機能を助けてもいる。
このようなフロントも含めたクラブ全体としての好パフォーマンスの実現こそが、リバプールの“総合力の高さ”と言えるのではないか。そしてクラブ全体がコンセプトを共有してブレない様は、チームの一体感を生み出すだけでなく、アンフィールドの観衆が巻き起こす異常なまでの情熱の源でもあるのだろう。
ブライトン戦のディアスの先制弾は、このようにオリジナルを極めるリバプールの“総合力”の象徴だったのである。
(文:本田千尋)
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