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前田大然が払拭したセルティックの悪夢。ポステコグルー監督の精神を理解する男が与えた脅威【分析コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

前田大然が値千金の先制ゴール

前田大然
【写真:Getty Images】


 だが、初めてトニー・マカロニ・アリーナを訪れたストライカーに、過去の苦い記憶や「苦手意識」は関係なかった。今季これまで2度の対戦時にはいなかったFW前田大然は、自らゴールを挙げるだけでなく、何度もビッグチャンスに関与してセルティックに勢いをもたらした。

 まずは14分、PK獲得で先制のチャンスを作り出した。MFカラム・マクレガーのクロスは相手にブロックされたが、こぼれ球に反応した前田がペナルティエリア内からすかさずシュートを放つ。するとボールは再びブロックを試みたリヴィングストンのDFジャック・フィッツウォーターの手に当たりハンドの判定が下った。

 しかし、PKをマクレガーが右ゴールポストに当ててしまい絶好機を逃してしまう。過去の相性の悪さもあってか、セルティックに不穏な空気が漂い始めた。

 ただ、そんな陰鬱な雰囲気をすぐに吹き飛ばしたのが前田だった。17分、FWジョタが蹴った右コーナーキックにDFカール・スターフェルトが飛び込み、ニアサイドでヘディングシュートを放つ。これはリヴィングストンのポーランド人GKマクシミリアン・ストライェクに弾かれたが、跳ね返りを前田が頭で押し込んだ。

 背番号38の日本代表ストライカーにとってリーグ戦5試合ぶりのゴールは、セルティックに流れを引き寄せる重要な1点となった。もしPK失敗を引きずったまま戦っていたら、どんどん悪循環にはまって精神的に追い込まれる展開になってもおかしくなかった。

 その後、しっかりと主導権を握ったセルティックは試合を優位に進めていく。そして後半開始直後の46分、追加点の場面でも前田が大きな役割を果たした。

 右サイドからDFアンソニー・ラルストンが上げた鋭いクロスを、最後はリヴィングストンのDFニッキー・デヴリンが触ってオウンゴールとなるわけだが、ただのオウンゴールとは言い切れない。

 味方が右サイドを突破する間に猛然とゴール前まで駆け上がっていった前田は、ラルストンがクロスを上げた瞬間に走るコースを変え、センターバックの背後を取った。前田とラルストンの間では、相手選手がクロスに触ってボールの軌道を変えた。

 これにより自分の前にノーマークの前田が突然現れ、さらに予想とは違う軌道のボールが目の前に飛んできて、同時に両方の対応に迫られたデヴリンが不意にボールをゴールへ押し込む形となってしまった。

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