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アーセナル、アルテタ監督が許せなかった「25分間」。欧州CLという現実を見据えた上で描く理想【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

CLの舞台に返り咲くなら…



 そしてアルテタ監督は、次のようなコメントを残した。

「我々が望むやり方でゲームをコントロールするために、我々は成熟、理解、能力を示さなければならない」

 実に理想主義者らしい言葉だが、要するに、アルテタ監督からすると、ポゼッションを高めてボールを支配しながら、失ったときに「守備面において適切な構造を有して」ボールを奪い切れず、失点を重ねたことが「好ましくなかった」ようだ。

 アウェイで3-2で勝ち切って貴重な勝ち点3を獲得したのだから、何もそれでよいのではないかという見方もできる。しかし、かつてアーセン・ベンゲルの下でプレーし、ペップ・グアルディオラの下でコーチとして働いた経験を持ち、かつ究極的にはポゼッション型を突き詰めることを理想とするアルテタ監督からすると、リードを2点に広げてからの失点は許せなかったのだろう。どれだけボールを握って試合を支配したとしても、ちょっとした隙を与えただけで失点してしまうのがフットボールというスポーツ。プレミア上位陣の対決やチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメントのようなハイレベルな試合であればあるほど、わずかな気の緩みや集中の欠如が致命傷となってしまう。

 つまりアルテタ監督としては、アーセナルが来季はCLの舞台に返り咲くことを本格的に視野に入れているからこそ、“ワトフォード戦の2失点目”が許せなかったのではないか。ワトフォードに競り勝ったアーセナルは、現在4位。今節を終えた時点で未消化の試合が3試合あることを踏まえると、来季のCL出場権獲得の可能性は十分にあると言えるだろう。

 もちろん自らの“理想”を突き詰める上でも不用意な失点は受け入れ難いものだが、CL復帰という“現実”を見据えた上でも、リードを広げてからの失点は「好ましくなかった」のだ。

“ワトフォード戦の2失点目”に対して怒りをにじませたアルテタ監督のコメントは、“目的なき完璧主義者”ではなく、“現実を見据えた理想主義者”としての発言だったのである。

(文:本田千尋)


【了】

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