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Jリーグ 3年前

「ボールから焦点を離す」。ガンバ大阪ヘッドコーチはどこを見ているのか? 片野坂知宏監督は「攻撃が好きなので」【4局面の再考・後編】

text by 小澤一郎 photo by Getty Images

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サッカーとはどういったスポーツなのか。机上で考えはじめるとキリがない。『フットボール批評issue35』(3月7日発売)では、サッカー4局面の解剖学と題しサッカーのトランジションについて考察している。今回は、発売に先駆け、サッカー指導者としてメキシコで武者修行し、1つの本をきっかけに単身ポルト大学に留学した“行動力の化身”安田好隆(ガンバ大阪ヘッドコーチ)のインタビューを一部抜粋で公開する。今回は後編。(文:小澤一郎、インタビュイー:安田好隆)


片野坂知宏監督をサポートするための視点

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片野坂知宏監督【写真:Getty Images】

――我々メディアやファン、サポーターはスタンドから俯瞰的に試合を観ているので、今がどういう局面かを理解しやすいと思いますが、監督とコーチはベンチですので局面を瞬時に理解するのが難しいように思っています。高速化した現代サッカーにおいて、4局面が高速循環する中、ピッチ目線での局面把握はどうやっているのですか?


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「慣れもあると思います。僕も最初はやはり上(スタンド)から見ている画と、下(ベンチ)からの画ではギャップがありました。

 ただ、得てしてボール周辺以外の局面が大事なことが多かったり、どう攻撃をしているかが、どう守備をするのかを決めていることが往々にしてあります。そして、それを観切れなかったことで悔しい思いをしたこともたくさんあります。そういう実践体験を積みながら培っていった部分はあると思います。

 あとは、ここにボールがある時に『あそこはどうなっているのだろう? 次はどうなるだろう?』ということを考えながら観る癖を長年かけて、培ってきました」

――もう少し詳しく教えてください。おそらく、本誌を読む方も読者の人もフットボールの見方、解釈のレベルを高めたいと思っていて、どうすればいいのか? というヒントを探しています。特にプロの試合は、シームレスに4局面が素早く循環しているので、なかなか目が追いつかないという読者の方も多いと思うのですが、サッカーの見方において何かコツのようなものはありますか?

「そうですね、僕の経験から言うと、ゲームを見ている時にボールから焦点を離すことを恐れないことだと思います。

 ボールから焦点を離すとどうしても何か大事なものを見落とすんじゃないか、という恐怖心はすごくあると思います。僕もそうでした。

 しかし、少し俯瞰的に見ることができるようになってくると意外とボール周辺をボヤッと見ながら、別のところをクリアに見ることができるようになってくるんじゃないかなと思います。怖いですけど(笑)」

――ベンチワークで言うと、安田さんは今、片野坂知宏監督と異なる視点を持って試合を見ている、つまり役割分担しているのでしょうか?

「打ち合わせは特にはしていませんが、どちらかというと片さんは攻撃が好きなので、僕は守備のことをコーチングでサポートすることが多いかもしれません。あと、試合を観ながら自分がいつも考えているのは、『そもそも何でこれが起きているのか?』ということです」

――どういうことですか?

「例えば、攻撃が上手くいっていない時に、攻撃のことだけを考えるのではなく『守備の方法に問題があるのか? そもそもなぜ攻撃するエリアにボールが入っていないのか? 敵陣ではなく、自陣に問題があるのか?』といったことを考えるようにしています。今目の前にある現象の1個前というか、その現象だけを見るのではなく、なぜそもそもこの現象が起きているのか? というのは常に考えています」

『フットボール批評issue35』

<書籍概要>

定価:1650円(本体1500円+税)

特集 サッカー4局面の解剖学

「攻守の切り替え」は死語である

 サッカーの局面は大まかにボール保持、ボール非保持、攻撃→守備、守備→攻撃の4つに分けられる、とされている。一方でビジネスの局面は商談、契約などには分けず、プロジェクトの一区切りを指す意味合いで使われることが多いという。しかし、考えてみれば、サッカーの試合は区切りにくいのに局面を分けようとしているのに対し、ビジネスの場面は区切れそうなのに局面を分けようとしていない。禅問答のようで非常にややこしい。

 が、局面そのものを一区切りとするビジネスの割り切り方は本質を突いている。プロジェクト成功という目的さえあれば、やるべきことは様々な局面で自然と明確になるからだ。ならば、ビジネス以上にクリアな目的(ゴール)があるサッカーは本来、ビジネス以上の割り切り方ができる、はず。結局のところ、4局面を解剖する行為は、サッカーの目的(ゴール)を再確認するだけの行為なのかもしれない。

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【了】

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