武器にし切れていない教授のコンセプト
その要因としては、まだラングニック暫定監督のコンセプトが浸透し切っていないことが考えられる。ワトフォード戦の幾つかの場面では、ボール奪取後にヨコではなくタテに速く繋ごうとしたことや、前線からのプレスで相手にロングボールを蹴らせるなど、近年のレッドブル系列のチームの躍進の源となったサッカーの断片が垣間見えた。特に、右サイドで先発したアンソニー・エランガは、オフ・ザ・ボールの場面で縦に効果的な動きを見せるなど、ラングニック暫定監督のコンセプトを理解して体現できているようである。だからこそ、19歳のFWは“教授”に見出されたのだろう。
しかし、チーム全体として観れば、前線に素早く繋ごうとするパスワークはぎこちなく不正確で、ロングボールを蹴らせても後ろで上手く回収できないなど、選手たちはラングニックのコンセプトを頭では理解できていても、スムーズに表現するに至っていない。
また、敵将のロイ・ホジソン監督は、そうしたラングニックのチーム特有のパスワークを研究してきているようだった。このワトフォード戦でマンUの選手たちは、縦に繋ごうとすると、敵の出足の鋭いプレッシングに苦しんだ。要するに、現段階でマンUは、まだまだ“教授”のコンセプトを自分たちの武器にし切れていないのである。
もちろん今季の日程もどんどん残りが少なくなってくるので、悠長にしてもいられない。だが、ラングニックにとって現在の仕事が難しい主な理由は、マンUの既存メンバーが“自分が選んだ選手ではない”、ということだ。