スコアを動かした交代策
後半21分にレオ・セアラと水沼を下げ、アンデルソン・ロペスとエウベルを2人同時に投入する。「相手が深く守備をしていたので、ロペスのような選手がすごく合うと思った」と語る通り、攻撃の活性化を託したのだ。
この狙いが3分後にいきなり結実する。松原からパスを受けたロペスは右からドリブルで持ち込み、4人のDFを引きつけながらゴール前にラストパスを送った。次の瞬間、走り込んだのが仲川。背番号23は無人のゴールに右足シュートを蹴り込み、ようやく試合を振り出しに戻すことに成功する。
「マリノスで点を取る時はああいうシーンがかなり多くて、それがウイングの仕事。ペナルティマークくらいまで入っていけるとチャンスになるし、点が取れるので。得点王になったときの感覚というか、自然とゴール前に体が入っていきました」
本人も大きな手ごたえを口にしたが、開幕戦ゴールは3年ぶり。得点を量産していた2019年の感覚を取り戻しつつあるからこそ、結果が出たのだ。これは仲川自身にとっても、チームにとっても大きな一歩と言っていい。
その後もマリノスは猛攻を見せ、33分にはロペスが逆転弾をゲット。そのまま勝利を手にするかと思われた。が、ロスタイムに再びセットプレーから清武に2点目を決められ、ドローに持ち込まれてしまう。
シュート数7本対22本・ボール支配率37%対63%、パス成功率67%対87%とデータ上でも完敗だったセレッソにしてみれば、起死回生の同点弾であり、ラッキーな勝ち点1に他ならない。しかしながら、マリノスにしてみれば勝ち点2を落とした試合ということになる。リーグ連覇中の川崎フロンターレが前夜のFC東京戦で苦しみながら勝ち点3を手にしたのを考えると、やはり悔やまれる結果と言うしかない。
それでも「マリノスの価値を見せることができたし、これからもっともっとよくなる」とマスカット監督が満足感を吐露した通り、試合自体は非常に収穫のあるものだった。スタートから出たレオ・セアラや水沼ら攻撃陣も悪くなかったし、喜田拓也と渡辺皓太のボランチコンビもダイナミックな動きを披露。新戦力のロペスや西村拓真らもそれぞれ持ち味を遺憾なく発揮していた。リスタートの失点を除けば、期待感の高まる戦いぶりだった。
そして仲川が完全復活ののろしを上げたことも特筆すべき点だ。