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「クリスマスツリー」とも呼ばれる[4-3-2-1]のフォーメーションで成功例として誰もが思い浮かべるのが、カルロ・アンチェロッティが率いたミランだろう。当時のミランの強さの秘訣とは何だったのか? 1日平均5試合、年間1500試合を観戦する変態による変態フォーメーション本『サッカーフォーメーション図鑑 配置の噛み合わせが生む位置的優位性を理解する』(龍岡歩著、2月15日発売)より、05/06シーズンのミランを一部抜粋し、前後編に分けて公開する。(文:龍岡歩)
「ミランがあと何点取るのか?」
このシーズン、ミランはセリエAで2位、チャンピオンズリーグで準優勝とあと一歩のところでタイトルを取り逃す悔しいシーズンとなってしまったのだが、個人的には8年に亘るカルロ・アンチェロッティ政権下で最強のチームだったと確信している。前年と2年後にチャンピオンズリーグを優勝した時のチームと比較しても、陣容、試合内容、システムの完成度では群を抜いていた。
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特にこのシーズンのチャンピオンズリーグ決勝はいわゆる「イスタンブールの奇跡」として語り継がれる劇的な展開で最後はPK負けに追いやられたものの、決勝戦の前半45分をあれだけ一方的に押し込んだチームは過去記憶にない。あまりにミランが圧倒的な内容で3対0にしてしまったので、後半は「ミランがあと何点取るのか?」という展開が想定され、当時TV観戦していた筆者はハーフタイムで寝ようかと本気で考えたほどである(最終的には寝ずに後半も観戦したのが大正解だった)。
ある意味、前半に圧倒しすぎてしまったことで歴戦の雄を揃えたミランの選手たちといえど、後半は非常に緩い入り方をしてしまったのが痛恨だった。だが、この決勝戦に至る過程で見せた強さは今も鮮明に記憶に残っている。
陣容的にも充実していた。特にカフー、アレッサンドロ・ネスタ、ヤープ・スタム、パオロ・マルディーニを揃えた4バックは当時欧州最強の陣容だったといっても過言ではない。なおかつこの[4-3-2-1]のフォーメーションに非常にマッチした顔ぶれだったことも見逃せない。右のカフーは無尽蔵のスタミナを活かして最前線まで駆け上がり、その分左のマルディーニがバランスを取る「左右非対称」の構造もカルチョではお馴染みのパターンである。
攻撃では2年目のカカが躍動し、縦の推進力が加わった。それまでマヌエル・ルイ・コスタとリバウドを並べたダブルOHだとどちらも一度、足元にボールを受けて時間を作るタイプだったので縦の推進力には欠けていた。これがタイプの違うルイ・コスタとカカの組み合わせになったことで、より多彩になったのである。
(文:龍岡歩)
『サッカーフォーメーション図鑑 配置の噛み合わせが生む位置的優位性を理解する』
<書籍概要>
定価:1870円(本体1700円+税)
1日平均5試合、年間1500試合を観戦する変態による変態フォーメーション本
サッカーフォーメーション界のイロハのイ[4-4-2]から滅多にお目にかかることのない[3-4-3(ダイヤモンド)]までを完全網羅した、フォーメーション変態のフォーメーション変態によるフォーメーション変態のための一冊。4バックと3バックのフォーメーションに分け、フォーメーションごとの強みと弱み、メカニズム、観戦チェックポイントを紹介し、対全布陣噛み合わせ一覧、過去の名チーム、フォーメーション名勝負数え歌なども収録。
【了】