攻撃のクオリティ不足を証明するデータとは?
ラングニック体制となってからワースト試合だった第21節ウォルバーハンプトン戦と比較すると試合内容は改善されつつあり、先週末に行われたアストン・ビラ戦とは異なり自分たちでボールも保持できていた
一方で今節はファイナルサードでの創造性と選択肢の少なさを露呈した。
基本的にウェストハムはリトリートした守備陣形で守るため、DFの背後へのスペースは少ない。そのためカウンターに強い選手が多いマンチェスター・ユナイテッドの選手たちの良さが発揮できるシーンは限定的だった。
今節、ユナイテッドはトータルで18本、枠内シュート3本を放っている。これだけのシュートを放ちながらも、1試合あたりのゴール期待値を示す『xG』では1.67に留まっている。(xGは『The xG Philosophy』を参照)
この1.67の内訳を見ると、ラッシュフォードが決めたゴールシーンの期待値が0.87となっており、その他の17本のシュートでの合計値は0.8。『xG』だけでファイナルサードでのクオリティ不足を証明することはできないが、質の高いチャンスを作ることに苦労していたのはこのデータから明らかだろう。
ユナイテッドはロイ・ホジソンが監督を務めていた時代のクリスタル・パレスも苦手としていたように、リトリートされたチームを崩すことは以前から苦手としている。今節、出番が訪れなかったドニー・ファン・デ・ベークは狭いエリアでのパス交換から決定機に絡むことができる。こうした相手には味方同士の連係から崩せるファン・デ・ベークのような選手を活かしてもいいかもしれない。
攻撃ではクオリティ不足を露呈したものの、ラストプレーで勝ち越したユナイテッドは、ウェストハムをかわしてUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位まで浮上。6位トッテナムは19試合、7位アーセナルは20試合を消化している。一方でユナイテッドは22試合を消化しているものの、直近の2連勝で大幅に順位を上げることに成功している。
次節以降ユナイテッドはバーンリー、サウサンプトン、リーズ、ワトフォードとボトムハーフに沈むチームの対戦が続くため、逆転でのCL出場権獲得を達成するにはここで1点でも多くの勝ち点を積み上げる必要があるだろう。
(文:安洋一郎)
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