【写真:Getty Images】
日本代表は21日、国内組の選手たちを集めた合宿を打ち上げた。最終日は練習試合で流通経済大学に7-0の大勝を収めた。
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初日から11対11のゲームが組み込まれるなど、連日強度の高い練習が続いた。また、今回はウズベキスタン代表との国際親善試合が中止になった影響もあって最終日が流経大との練習試合に。普段の合宿では試合2日前から非公開練習になるが、全日程、全てのメニューが報道陣に公開された。
19日には9対9+フリーマン2人というポゼッションゲームがあり、始まってすぐ森保一監督が練習を止めて大きな声で指示を出した。もっとプレッシングや攻守の切り替えの強度、パス回しのテンポを上げるよう指揮官が檄を飛ばすと、練習の雰囲気は一変した。
その瞬間からパス回しのスピードが目で追えないほど速くなり、ボールに対する寄せの強さやポジションを取り直す回数など、あらゆる要素が向上。それまでのクオリティも非常に高かったが、監督の檄が飛んでからの選手たちの判断スピードや精度、プレーの選択肢の幅広さには驚くばかり。森保監督が練習に積極的に介入するようになった19日から最終日まで、ピッチに立った22人の緊張感や集中力が途切れることはなかった。
「もちろんまずはワールドカップに出なきゃいけないですけど、森保さんはワールドカップでベスト8以上になるチーム、結果を残すための基準を僕らに伝えてくれていると思う。その基準や森保さんの意識は僕らも感じています。
だからこそ、ああやってアグレッシブさ、インテンシティがちょっと足りなかったら練習中すぐに止めていますし、監督があそこで伝えることで、あの時も一気に雰囲気が締まったんですよね。で、ベースの強度が上がる。それはすごく大事なことだと思うので、それを含めて日本代表はいい刺激を与え合いながらトレーニングができていて、先を見据えた意識で取り組めているなと僕は感じてます」
そう語るのは代表で10年以上のキャリアを誇るDF長友佑都だ。我々報道陣としては日本代表における基準の高さを見せつけられる日々だったが、今回の国内組合宿を振り返ったベテランは「世界で勝っていくために、強度はまだまだ足りないかと思います。それは自分自身もそうですね」と満足していない。
「もっと強度を上げないといけない。日本の選手は小さいコートの中でアジリティを発揮することは得意なのかもしれないですけど、コートが大きくなるにつれて強度を出せなくなる課題が日本サッカーにあるかなと思っていて。
世界のレベルを考えると、フルコートでやった時の走力やフィジカルを発揮できるかどうかのメリハリ、パワーの使いどころなどを、もっと僕らは学ばなければいけないし、そこはまだまだやるべきことが多いなと。
そして、自分自身が世界で戦うためのアジリティやインテンシティーは伝えていきたいなと思います。伝えるだけじゃなくて、自分自身が示さないといけない。僕自身もまだまだトレーンイングを積まないと難しいかなと思っていますね」
35歳になっても日本代表であり続けている長友は、その難しさとともに、世界と戦う上で求められる基準も熟知している。まだまだ若者に負けるつもりはない。今回の合宿序盤には、代表経験の浅い若手選手たちが、常連組が生み出す練習のスピード感や強度についていくのに四苦八苦している様子も見られた。
そういった姿を間近で見ていた長友は、あるエピソードを明かしてくれた。
「インテンシティのところでは、(チェイス・)アンリなんかは紅白戦とかでも(左サイドバックと左センターバックとして)一緒に組んでいましたけど、『長友さん、もう速すぎて脳がついていかないです』とボールが出るたびに言っていたんですよね。
でも、アンリは日本代表のスピードを感じたかもしれないですけど、また日本代表を世界と照らし合わせて、世界のレベルに入った時に、まだまだ自分たちが脳の神経系も含めて遅いんだということを感じると思うので、練習からでも伝えていきたいと思っています」
トレーニングパートナーとして帯同した17歳のDFチェイス・アンリにとっては、かけがえのない経験となっただろう。海外移籍を目論んでいると言われる逸材センターバックは連日行われた強度の高い練習によってコンディションを崩し、最後の2日間は先輩たちのプレーを見学することしかできなかった。
世代別代表で注目を浴び、知名度が上がっても、A代表はまた別物。ポテンシャルだけで割って入れる場所ではない。そして、ワールドカップの舞台で目標を達成するには、チーム全体の基準をさらに底上げする必要もある。つまりこれからも基準となるラインは上がり続ける。日本代表選手たちが「日本の代表」に選ばれている理由がよくわかる、貴重な5日間だった。
(取材・文:舩木渉)
【了】