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運命を変えた出会い。“戦術ブロガー“を”真の指導者”にした転機は…【レネ・マリッチの章・後編】

text by 結城康平 photo by Getty Images

今季からマルコ・ローゼと共にボルシア・ドルトムントへ。戦術ブロガーから成りあがった欧州最先端の分析家レネ・マリッチとは何者か。好評発売中『フットボール新世代名将図鑑』から、戦術ブロガーから成り上がった欧州最先端の分析家として収録「レネ・マリッチ」の項を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:結城康平)

監督としてのデビューは夢物語ではない

レネ・マリッチ
【写真:Getty Images】

 しかし、彼のキャリアにとって1つの転機が訪れる。トゥヘルと同じくマリッチの能力を評価したのがマルコ・ローゼだ。当時ザルツブルクでU-18を指導していた彼はマリッチを複数回チームに招き、何度も戦術について議論を重ねた。

 そして戦術議論を続けたある日、マリッチはローゼに「アシスタントコーチを探していませんか?」と尋ねた。そのアイデアに感銘を受けたローゼがチームにアシスタントコーチとして推薦したことで、マリッチとローゼの旅路がスタートする。

 ローゼの推薦を得たマリッチは、ザルツブルクのアカデミーマネージャーを務めていたエルンスト・ターナーにプレゼンテーションを披露。もともとロジャー・シュミットのチームを分析していたマリッチは説明されたレッドブルグループのトレーニング理論を自然に理解し、鋭い視点でターナーを驚かせた。

 面接でターナーを魅了したマリッチをアシスタントチームに加えたザルツブルクのユースはUEFAユースリーグを制覇する偉業を成し遂げ、トップチームの監督に就任したローゼはマリッチをともに昇格させる。

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 ザルツブルク時代のマリッチは、誰よりも早くグラウンドに出勤することからスタートしていた。練習メニューを考えることが彼の仕事で、練習の指揮でもローゼをサポート。練習の要点をまとめて、相手と自チームの分析も担当する。最後にコーチングスタッフとのミーティングや選手たちと会話をする。ハードワーカーとして知られていた彼は、プロの世界にも見事に適応。ローゼの影となり、分析とトレーニングの両方をこなした。

 そして、彼らはボルシアMGでも最高の相棒としてチームの指揮を続けることになる。ボルシアMGではビデオ分析チームのフィリップ・シュッツェンドルフやドミニク・メーブスのサポートを得て、これまで以上にトレーニングに重心を移している。監督の右腕としてアナリストから情報を集め、その分析データを統合することでトレーニングを計画していく。来シーズンからはローゼとともにドルトムントへの加入が決定しているマリッチは、欧州で最も注目される若手指導者の1人だ。

 ユリアン・ナーゲルスマンが監督としてデビューした年齢を考えれば、マリッチにとっても監督としてのデビューは夢物語ではない。本人も焦ってはいないようだが、監督という仕事には興味を示している。

(文:結城康平)

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