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何者か?“戦術ブロガー”から欧州で最も注目される若手指導者となった男【レネ・マリッチの章・前編】

text by 結城康平 photo by Getty Images

今季からマルコ・ローゼと共にボルシア・ドルトムントへ。戦術ブロガーから成りあがった欧州最先端の分析家レネ・マリッチとは何者か。好評発売中『フットボール新世代名将図鑑』から、戦術ブロガーから成り上がった欧州最先端の分析家として収録「レネ・マリッチ」の項を一部抜粋して前後編で公開する。今回は前編。(文:結城康平)

トゥヘルから届いた一通のメール

レネ・マリッチ
【写真:Getty Images】

 レネ・マリッチ。「戦術ブロガー」として他を圧倒する洞察力を示した男は、欧州が注目する存在となっている。故郷のハンデンベルクでプレーしていた青年は、怪我によって選手としてのキャリアを絶たれてしまう。愛するフットボールを諦められなかった青年は地元でボランティアとして指導者のキャリアをスタートし、U-17を担当することになる。

 田舎街で指導者としての勉強を続けていた青年にとって、最も大きな悩みごとが「フットボールについて語り合う仲間」が存在しなかったことだった。同世代のコーチは地元には少なく、現代のフットボール理論について盛り上がることは難しい。だからこそ、マリッチは自らの理論を発表する実験場として「ブログ」という手段を選択する。

 インターネットを通じて知り合った5人の指導者は、2011年に『Spielverlagerung』(シュピールフェアラーゲルング)というブログをスタートすることになる。マリッチは欧州が注目するようになった戦術ブログのスタートを「フットボールのことを語り合いたかった5人の指導者が作った場所」と表現している。
 
 分析の内容は徹底的に玄人向けで、それはマリッチにとって1つの狙いだった。深くフットボールについて語り合う相手を探すことを目標としていたマリッチは、一般的なフットボールファンのPVを集めようとは考えていなかった。

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 その結果として、マリッチは地元では得られなかった良質なフィードバックを集めることに成功する。彼は「インターネットに記事を寄稿することで、5000人以上の読者から200のコメントをもらえた」とコメントしている。シンプルなことを難しく表現していると批判する識者も少なくはなかったが、多くの指導者やアナリストが彼の分析を評価するようになっていく。そして、プロフットボールクラブに関わる最初のきっかけとなったのがトーマス・トゥヘルから届いた1通のメールだった。

 当時マインツを率いていたトゥヘルは彼のチーム分析レポートに興味を示し、マインツのトレーニングに招待することになる。そこで2時間近くフットボールについての議論を楽しんだトゥヘルは、シュピールフェアラーゲルングのメンバーにスカウトレポートを依頼する。

 彼らはその分析能力を活かしてタスクを完遂するが、当時のマリッチは心理学を専攻する学生として「フットボールを仕事にする」ということを真剣に考えてはいなかった。プロのクラブから案件ベースで依頼をもらうことはあったが、あくまでも一時的なアルバイトとしか考えていなかったのだ。1日のうち、フットボールの勉強やコーチングに14 時間を費やすこともあったマリッチは、コンサルタントとしての業務に対応しながらハンデンベルクの監督を続けていた。

(文:結城康平)

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