ミドルシュートに込められた決意
「柴戸は練習後の居残りシュート練習の仲間。彼の癖とかを分かっていて、入らないと思ってちゃんとポジションを取っていたので、コースを変えることができた」
しかし、実際には槙野が触らなくても入っていた可能性は高い。それくらいの強烈ミドルシュートだったのは間違いない。「自分たちが今後の浦和をリードしていかなければならない」という決意があの一撃に込められていたのかもしれない。
14年間チームをリードしてきた阿部が残してきたものは非常に大きい。2007・2017年の2度のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇に始まり、2016年リーグカップ、2018年天皇杯と数々のタイトルをクラブに残した立役者が彼だった。しかも、日本代表として2010年南アフリカワールドカップベスト16入りの原動力にもなった。
今季もキャプテンとしてリカルド監督率いる新生・浦和をけん引し、FC東京とのJ1開幕戦ではゴールも奪った。眩いばかりの実績を持つ男を間近で見てきた柴戸や伊藤、平野佑一といった若き面々は、少しでも偉大な先人に近づきたいと日々、自己研鑽を続けてきた。その努力の一端が今回の天皇杯制覇という形で結実したことは、今後への大きな弾みになるに違いない。