ベルギー1部リーグで首位を走るロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズで、三笘薫が大きなインパクトを残している。東京五輪を終えて海を渡った24歳は、11月に日本代表から初招集を受けた。初挑戦の欧州で左ウィングバックという新しいポジションにも挑戦している今、何を思いながらプレーしているのか。ベルギーでの試合後に直撃した。(取材・文:舩木渉)
サポーターも「ミトマ」に熱狂
ブリュッセル南駅から82番のトラムに乗って10分弱、「ユニオン」という駅で降りて5分ほど歩くと ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズの本拠地スタッド・ジョセフ・マリアンが住宅街の中に突然あらわれる。
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1919年に建てられ、最近では2018年に改築もされているが、外観も内装もまるで歴史的建造物かのような趣がある。スタジアムの三辺はデュダン公園の丘に埋まるように建てられており、メインスタンド側にロッカールームやプレスルームなどの必要な機能が集約されている。
とはいえ施設全体としては非常に古くて狭く、メインスタンドの座席もほとんどが細い長椅子、バックスタンドに至ってはオールスタンディングという20世紀に戻ったかのような光景が広がる。スタンド下にあるグッズショップ併設の狭いバーにはソーシャルディスタンスなどお構いなしに老若男女がひしめき、仲間たちと愉快活発にビールを飲み交わしていた。現代のサッカースタジアムとは思えない光景の数々に、ただただ驚くばかりだ。
20世紀前半にリーグ優勝11回を誇る古豪のユニオンは、地元の誇りとして愛されている。スタンドに集まったサポーターも他のベルギーのクラブとは一線を画し、どこかJリーグに似た雰囲気を感じた。変な表現にはなるが、“温かい熱さ”とでも言おうか。
チームがリードされていようと歌うのをやめず、最後までピッチで戦う選手たちに声援を送り続ける。一方で、発煙筒を焚く熱狂的な部分も持ち合わせ、試合前のウォーミングアップ中から審判をおちょくるような粗暴さもある。
そんな彼らユニオンサポーターのムードは、ある選手の登場によって一変した。現地11月26日に行われたルーヴァン戦のハーフタイム、三笘薫がウォーミングアップのペースを上げ、「後半から投入されそうだ!」とわかった時のことだ。
昇格組ながらベルギー1部リーグで首位に立つユニオンだが、ルーヴァン戦は序盤から苦戦を強いられ、前半終了時に2点のビハインドを背負っていた。何とか苦しい状況の打開を図ろうというタイミングで三笘に声がかかり、ユニオンサポーターは沸いた。
「あいつなら何かやってくれるはず」
スタジアム内にそんな空気が充満し、後半が始まるとユニオンの選手たちの動きもいささか良くなっている。前半に比べてアグレッシブさが増し、自信を持って戦えているようだった。そんな中、左ウィングバックの三笘はピッチに立ってから5分で信頼に応えて見せた。