明治安田生命J1リーグ最終節、清水エスパルス対セレッソ大阪が4日に行われ、2-1で清水が勝利した。Jリーグラストマッチとなった大久保嘉人は先制点へとつながる見事なシュートを放った。今季で引退する稀代のストライカーは若い選手に物足りなさを感じながらも、あるべき姿をその背中で見せている。(取材・文:元川悦子)
幻となった192得点目
富士山がクッキリ見える12月4日のIAIスタジアム日本平。清水エスパルスのJ1残留を信じてスタンドに陣取った1万人弱の大サポーターの前で、Jリーグラストマッチを迎えた39歳のセレッソ大阪のFW大久保嘉人は大仕事をやってのけた。
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清水ペースで進んでいた前半35分。左CKのチャンスを得たセレッソは、清武弘嗣がインスイングでファーサイド目がけて絶妙のボールを蹴った。
「中の味方の立ち位置によって蹴るボールを変えることになっていた。あの時はすごくいいボールが行きました」と背番号10をつける主将は言う。
次の瞬間、待ち構えていた20番は迷わず右足を一閃。シュートは竹内涼に当たってコースが変わり、GK権田修一の手を弾いてゴールに吸い込まれた。待望の先制弾にセレッソの面々と目前のサポーター軍団は歓喜の渦と化した。「ついに大久保嘉人のJ1リーグ通算192得点目が生まれた」と誰もが信じて疑わなかったはずだ。
しかしながら、ふたを開けてみると、判定はオウンゴール。小菊昭雄監督と清武は試合終了後までその事実を知らず、会見で「あら…」と落胆した様子を見せていたほどだ。
当の本人はあっけらかんとしていた。
「記録する人が空気を読めばよかったんですけどね、最後だから…」と冗談交じりに「幻のゴール」に思いを馳せていた。
それでも、ここ一番でゴールに直結する仕事を果たすのが大久保だ。序盤から清水のアグレッシブな戦いを前に後手を踏み続け、苦戦を強いられる中、一瞬にして流れをグイっと引き寄せるボレーシュートを蹴り込む。「点取り屋の凄み」は引退間際になった今も全く変わらなかった。