エバートンの弱点
この日のエバートンには明確な弱点があった。それが中盤底2枚である。
オーソドックスな4-4-2でこの試合に臨んだエバートン。中盤底にはアブドゥライェ・ドゥクレとアランが入っている。基本的にはドゥクレが高い位置を取り、アランは低い位置でバランスを整える役割を任されていた。
エバートンはリバプールに対しても恐れず前からいく姿勢を見せたが、当然リバプールのカウンタープレスはかなり強力。ボールを奪っても、すぐ中途半端な位置で奪い返されてしまう場面が決して少なくなかった。また、リバプールのビルドアップ時は、とくに2トップのプレスが機能しておらず、簡単にボールの前進を許してしまうことが目立っている。
すると起こってしまうのが中盤の駒不足だ。先述した通りドゥクレは基本的に前目の位置を取るので、相手のカウンタープレスにハマったりビルドアップを封じられなかったりし、チームの矢印が自陣ゴール方向に向くと、必然的に中盤はアラン一人で守らなければならなくなる。そのためリバプールは、アランの脇にいるチアゴ・アルカンタラとヘンダーソンの2人がフリーになる機会が多かった(70分の時点でヘンダーソンのタッチ数は全体2位、チアゴは同3位)。
配給力のある選手が自由になれれば、当然サラーやサディオ・マネ、ジョタ、あるいはオーバーラップしてくるロバートソンにトレント・アレクサンダー=アーノルドが活きる場面は多くなる。このように、リバプールはエバートンの攻撃的な姿勢を逆手にとって相手陣内深くへ確実に侵入していたのだ。
ちなみにアランの負担がとてつもなく大きかったと分かるシーンは、リバプールの4点目だ。
アランは最初、右サイドのサラーらにプレッシャーを与えている。そこからボールが反対サイドに流れると、アランも長距離を移動。そして最後、ボックス内左に侵入したジョタを誰も見ておらず、結局はアランがマークに行っている。この小柄なブラジル人は運動量が抜群で確かに2、3人分の働きはできるが、リバプール相手にそれを遂行するのは結果無謀だったと言わざるを得なかった。