【写真:Getty Images】
サッカー女子日本代表(なでしこジャパン)は、現地29日に行われるオランダ女子代表との国際親善試合に向けて調整を続けている。
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同25日のアイスランド女子代表戦には0-2で敗れた。池田太監督にとってなでしこジャパンでの初試合だったが、結果は出ず。それでもチームとしても個人としてもポジティブな内容が垣間見られる90分間だった。
中でも「個」に目を向けると、MF林穂之香のプレーには際立った成長が感じられた。今年はセレッソ大阪堺レディースからスウェーデン1部リーグのAIKフットボールへ移籍し、夏には東京五輪出場も果たした。
五輪の舞台では切り札的に起用されていたが、あれから数ヶ月経った現在はさらに大きな成長がうかがえる。フィジカル面でよりたくましくなり、球際の激しい環境に身を置くことによってプレー判断の速度も格段に向上した。
「(AIKは)筋トレをすごくしっかりやるチームというか、(スウェーデンでは)どのチームもたぶんそうなんですけど。あとは個人に合わせてもメニューがあって、日本の時より上半身系も何種類か増えているので、そういうところで相手を抑えたりとか、走るのに上半身も必要なので、ちょっと体格良くなったのかなと思います」
「もともとワンタッチ、ツータッチ、スリータッチくらいが多かったんですけど、より(ボールが)来る前に(周りを)見て、(次のプレーへの)プランがなく止めてしまうと相手はスウェーデンだとファウル覚悟というか、体ごと当たってきて、ボールを失うということが最初の頃はすごくあったので、ちゃんとプランを持ってボールを要求してというのは、早くなってきていたらいいと思います」
林はスウェーデン移籍以降の自らのプレーの変化について控えめに語りつつも、確実に成長を感じているようだ。「海外の選手とやるのも日常になったので、怖さとかはもうないですね。これからそういう変化をピッチの上で出していきたいなと思っています」と、体格の大きな相手にも堂々と渡り合える自信をつかんでいる。
「サッカーのプレースタイルは日本でやってきたものがベースにあって、それにプラスで積み上げている形ですけど、生活環境とか周りの選手の雰囲気とかは全く違うので、日本にいた時より臨機応変さというかはついたと思いますし、いろいろなところに自分から対応できるようにはなったなとは思います」
たくましくなった林のプレー判断は、以前よりも遠くを意識するようになった。日本よりも直線的なスタイルのサッカーの中で戦い、「奥を見て、そこに(パスを)つける」ために縦方向へのロングパスや思い切ったサイドチェンジを積極的に使うようになったという。
欧州や女子サッカー界のトップクラスでは、多くのチームが技術力の高さとフィジカル的な強みを両立させたダイナミックなサッカーに舵を切っている。なでしこジャパンが再び世界一になるためには、速くて強くて巧いサッカーの流れに乗り、強豪国に打ち勝っていかなければならない。
そういった意味でアイスランド女子代表は、欧州女子サッカー界のトレンドや標準を示してくれた。林は「(アイスランド戦では)相手がスピードやロングボールを使ってのショートカウンターとか、攻め切るところが(ピッチ上で)やっていて『日本と違うな』とすごく感じたところ」と語る。
「逆に日本も何回かはそういう風にスピーディーに攻め切ってしまうことも織り交ぜていかないと、ずっと同じテンポで(パスを)回していても、なかなかゴールが生まれるチャンスはないと思うので、そこ(シンプルに攻め切る意識)は1つのプランとして、これから勝っていくために必要になるところじゃないかなと思います」
欧州基準を身につけたことで、なでしこジャパンが世界で勝っていくために求められることの理解も進んでいる。たった1年でも、経験を積み、吸収したことは多い。アイスランドにも個のタレント力で圧倒された感のある日本の女子サッカーは、林のように海外に出て国内とは違う基準を体感し、身につける選手を増やしていく必要があるかもしれない。
「相手の個の能力に1対1で対応するとか、奪い切る、当たり負けしないというところは、日本でも鍛えられますけど、(海外の)そういった環境で常にやることも1つの選択肢というか、プランとしてあると思いますし、自分は今の段階では、そっちの選択肢(国外に出て成長するため)で海外に来ました。でもやっぱり、組織での連係・連動を90分間通してしっかりやるところは日本の良さでもありますし、そこの(個と組織の)融合が大事だなと思います」
WEリーグやなでしこリーグなどの恵まれた環境に満足することなく、「組織」のために100%を尽くせる日本らしさを意識しながら、より競争が激しくワールドスタンダードを体感できる環境で「個」を磨き、それを代表チームに還元する。自分となでしこジャパンのために成長の循環を追い求めて海外に飛び出す日本の女子サッカー選手が増えていくことを期待したい。
(取材・文:舩木渉)
【了】