イ・ガンインが中心に君臨
マドリー戦で負傷した久保が不在の間、マジョルカの中心にはイ・ガンインが君臨した。トップ下で先発し、幅広い場所に顔を出してボールに触れ、味方を活かしながら攻撃のリズムを生む。今回のヘタフェ戦でも、そうした働きは非常によく目立っていた。
そんなイ・ガンインと久保が今季マジョルカで共演した時間は計50分である。決して多い数字ではないしまだまだ未知数な部分も多いが、ここまで見る限り、彼らのプレーイメージに大きなズレなどを感じることはない。また、互いに技術力があってボールも保持できるので、チームとしての攻撃の幅は広がるだろう。
しかし、ルイス・ガルシア監督はある部分を気にしている。『マルカ』によると、同指揮官はヘタフェ戦後、「タケとイ・ガンインが一緒にプレーすると多くのものを与えてくれるが、他の部分で失うものもある。彼らを見るのは素晴らしいことだが、自分たちの深みを奪ってしまう」とコメントしていたようだ。
ラ・リーガの下位チームであるマジョルカは、基本的に攻められる時間が長く、必然的にカウンターに出る機会も多くなる。ただ、その場面でどちらかというとスペースより足下で勝負する久保とイ・ガンインが持ち味を発揮するのは難しい。それならば、縦突破が代名詞のムブラなどを2列目で起用し深さを作った方がいいという面は、確かにある。そうなると、久保とイ・ガンインはトップ下のポジションを争うことになるだろう。
上記のことを踏まえると、配球力のあるイ・ガンインをダブルボランチの一角に置き、久保をトップ下、サイドにムブラやアントニオ・サンチェスを起用するというのは一案になる。しかしこの場合、気になるのは守備面だ。とくにイ・ガンインの場所が大きな穴になる可能性が高く、現実的とは言えない。
やはり日韓の至宝が共演するなら、トップ下イ・ガンイン、右サイドに久保が現実的な形になるだろう。上記した通りボールは持てるし相性も良いので、決して悪い選択ではない。しかし、ルイス・ガルシア監督のいう「深さ」、そして守備面などを考えると、そこに難しさが生まれてくるのも事実。久保が復帰し、今後どういったチョイスになっていくのか注目だ。
(文:小澤祐作)
【了】