柿谷曜一朗は偉大な先人のように…
大久保に惜別のゴールを送った柿谷としても、その1点がチームの勝利、ACL出場権獲得につながらなかったのは事実。悔しさはひとしおだったに違いない。
「失点した時は後ろがかりになっていた。相手の圧力は強かったけど、もうちょっと修正を早くしないといけないなと思ってます」と彼は気丈に前を向いた。
実際、まだ完全にACLの道が途絶えたわけではない。鹿島とは1ポイント差で、12月4日の最終節・浦和レッズ戦次第では4位でフィニッシュできる可能性はある。そのうえで、川崎フロンターレが天皇杯を獲れば、4位のチームが繰り上がるからだ。
そのシナリオは奇しくも大久保が無冠で現役を引退するという結末になってしまう。だが、名古屋の来季を考えたら仕方がない。勝負の非情さを嫌というほど分かっている柿谷も信じて突き進むしかないのだ。
この日、大久保と交換してもらったユニフォームを手にすれば、自然と闘争心が湧いてくるはず。30代になって点取り屋としての才能を大きく開花させた偉大な先人のように、名古屋の背番号8もここからを本物の全盛期にすべく、一歩一歩、前進してほしい。
(取材・文:元川悦子)