【写真提供:JFA】
【日本 0-2 アイスランド 国際親善試合】
サッカー女子日本代表(なでしこジャパン)は現地25日、アイスランド女子代表と対戦して0-2で敗れた。
【今シーズンのJリーグはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】
試合を通じてなかなか決定機を作れなかったが、なでしこジャパンは練習から取り組んできた形をいくつかピッチ上で表現できていたように見えた。その1つが「Xボール」だ。
聞き慣れない言葉だが、一体何か。右サイドで先発出場したMF成宮唯は次のように語る。
「チャンスの部分で動き出しが早くてオフサイドにかかってしまった場面がありましたけど、ミーティングでも言われている『Xボール』という、対角へのボールは意識してやっていました」
池田太監督が選手たちに求めている「Xボール」とはつまり、斜め方向へ「クロス」=「X」するパスのことである。
練習ではサイドの選手がドリブルで中に切り込むと見せつつ、やや浅めの位置から相手のディフェンスラインの頭を越えてゴール前に落とすような斜め方向のクロスの形に取り組んでいた。相手の準備が整いきっていない状況で、高めのディフェンスラインの背後にボールを入れ、そこに日本の選手が飛び出していく形を、アイスランド攻略法の1つとして準備していたのである。
実際に開始1分でいきなり右サイドの浅い位置から相手ディフェンスの頭越しを狙ったクロスが見られた。前半の32分にFW小林里歌子のシュートにつながったDF清水梨紗のアーリークロスも「Xボール」と言える。オフサイドになったものの、後半には左サイド寄りのMF長谷川唯からFW植木理子のヘディングシュートにつながる斜めのクロスが入った。
他にも攻撃を組み立てる際にサイドバックとサイドMFが縦に並ばず、例えばサイドバックがタッチライン際に張り出せばサイドMFが内側に絞ってポジションをとるなど、斜めに角度をつけた関係を作る意識もあった。
そこで相手の選手と選手の間に入ったサイドMFや、あるいは流れを見て下がってくる2トップの一角にボランチやサイドバックから斜めにパスを入れる。「Xボール」は様々な局面で相手に難しい対応を強いるための起点になるプレーと言えるだろう。
池田監督は「ボールホルダーに対して両脇の左右で角度を取る選手と、縦パスを受ける選手を作ろうというところはやっています」と述べる。「相手のアンカー脇は、サイドのMFが使うか前線の選手が降りて使う意図はあったので、トライしてくれたと思います」と語った通り、サイドバックやボランチから斜めのパスを入れやすい状況を作る狙いもあった。
結果的にゴールには結びつかなかったが、角度をつけた斜めのパス「Xボール」は、今後のなでしこジャパンにおいて連係を築くための基礎的な要素になっていきそうだ。
指揮官曰くアイスランド戦では「どうやって前進するかというところでは、選手には早い準備を求めていましたし、いいサポートの角度を意識して連続しようということで、相手陣に入るところくらいまではできたところもあった」という手応えがあった。
しかし、「その後のアタッキングサードでのちょっとした停滞感、フィニッシュまでつながるもう1つのところがまだまだだなというところが正直なところです」と悔やまれる部分もある。「Xボール」を起点にしたチャンスメイクの精度を高め、現地29日に行われるオランダ女子代表戦ではゴールまでつなげたい。
MF長谷川唯は「攻撃のバリエーションは本当に少なかったと感じていて、中央に相手の人数が多い中でどうやって崩していくかだったり、いつもだったらトップ下のところのスペースが空いてきたりするんですけど、今日の相手は本当に人に強くという形だったので、なかなかそういうシュートシーンは作れなかったというのがあって、難しかったところはあります」と話していた。
池田監督の求める「Xボール」は、長谷川が指摘した「バリエーションを増やさなければいけない」という点の打開策にもなるだろう。角度をつけた斜めの関係性は、連係・連動をベースとするなでしこジャパンの攻撃に必要不可欠だ。
(取材・文:舩木渉)
【了】