「チャンスは作れていた」
シャビ・エルナンデス新監督は、初陣となったエスパニョール戦とは異なり、3-4-2-1のフォーメーションを採用してきた。ベンフィカのスタイルを考えて、という意味もあっただろう。
「ボール支配」はシャビ監督が求めるテーマの一つで、この日もポゼッション率を高めていた。その中心にいるのはセルヒオ・ブスケッツであり、相棒フレンキー・デ・ヨングはそこをしっかりとサポート。そして、ジョルディ・アルバとユスフ・デミルの両ウイングバックが幅を取り、ニコ・ゴンザレスとガビのツーシャドーをハーフスペース、メンフィス・デパイを中央に置くことで、いわゆる5レーンを確実に埋めながら攻撃を繰り出していた。
シャビ監督の元、スペースを利用する意識は格段に上がったと言っていいだろう。このベンフィカ戦では、デパイが下がったことでできた空間にシャドーが走り込んだり、ダミーとなったWBの裏のスペースにボールを落とす場面が何度も見られていた。人が意識高く動けば、必然的にボールの動きも活発になる。クーマン前監督の元で、こうした連動性はあまりなかった。
42分の場面は、その形が最もわかりやすく表れていた。
最終ラインでボールを持つと、ニコが裏へ走り相手DFを引き付ける。それによりできた空間へデパイが下りてパスを受け、ブスケッツへバックパス。すると今度は、ボールが下がったことで前掛かりとなっていたベンフィカDF陣の背後をデミルが素早く突き、ブスケッツからのスルーパスを呼び込んだ。結果、デミルは敵陣深くで1対1の状況を作り出し、最後はポスト直撃のシュートを放っていた。
人とボールが良く動くことで相手DFに休む間を与えなかったバルセロナは、計14本のシュートを放っている。絶対的なフィニッシャーが不在と相変わらず決定力不足に泣いてしまったが、クーマン監督時代の停滞感のようなものはほぼなかった。シャビ監督も「肝心なのはチャンスを作ったこと」「足りなかったのはゴールだけ」と試合後に話しているなど、攻撃の質には満足感を示していた。