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バルセロナ、シャビ監督のサッカーは「疲れる」。その初陣はどうだったのか。さっそく表れた変化は…【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

重要な役割を果たしていたのは…



 この日のエスパニョールは守備時5-4-1の陣形をとっていた。後ろに5人を並べられるとどのクラブでも崩すのは難しくなるが、先述した通りバルセロナは32分の時点で10本ものシュートを放つなど、そこをうまく攻略していた。

 その中で重要な役割を果たしていたのが、フレンキー・デ・ヨングとニコ・ゴンザレスのインサイドハーフ二人である。

 バルセロナは攻撃時、相手の1トップに対し2人のセンターバックが数的優位を作りながらボールを運ぶため、ラインが高くなる。すると必然的にIHの位置も高くなるのだが、そこで徹底されていたのがポジショニングである。

 デ・ヨングとニコの二人は、相手ウイングバック、CB、サイドハーフ、ボランチの4人からなる四角形の真ん中に位置するシーンが目立っていた。つまり、IHがそこに立ち、SBとWGも絡むことで瞬間的な数的優位を作り出し、守備陣形にズレを生じさせたのである。もちろんこの役割はIHが基本的に行うが、状況によってはWGにシフトしても良い。

 また、IHに関してはそこでボールを引き出す役割だけでなく、散らした後は積極的にボックス内へ侵入し、相手DFを引き付けるタスクもこなしている。事実、エスパニョール戦における敵ボックス内のタッチ数で2番目に多かったのがニコ、同3番目がデ・ヨングだったというデータが出ている。

 後半開始早々の先制ゴールは、その狙いが表れていたと言えるだろう。

 左サイドで組み立てると、デ・ヨングが上記した四角形の真ん中に位置。そして一度エリック・ガルシアにボールが戻ったタイミングで左WGのガビもそこへ侵入したことで、瞬間的な数的優位を作っている。そしてE・ガルシア→セルヒオ・ブスケッツ→ガビとパスが繋がったことでエスパニョール守備陣は揺さぶられ、ガビに3人が寄せたことによりボックス内でデパイが1対1の状況を迎えることができた。ここは結果論になるが、これによりPKが生まれている。

 ボール支配はもちろん大事なのだが、最終的な目標は崩し切ること。だからこそ、シャビ監督はIHを組み立ての一部ではなく、崩しのピースとして我慢してでも高い位置を取らせるようにし、SBとWGを外に張らせることで相手に的を絞らせていない。こうした攻撃時の工夫は、前政権からの確かな変化と言えるだろう。

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