チームを救った若い世代
もともとDFの中山は三笘が仕掛けられる大きなスペースを作ることを意識し、自らはビルドアップに関与しながらサポートに徹した。そして時には得意の左足でクロスを上げ、ミドルシュートもお見舞いした。前半の南野拓実・長友佑都のコンビがオマーン守備陣を攻略しきれなかった分、東京五輪世代の縦関係はより異彩を放った。
ご存じの通り、後半36分の伊東の決勝弾も2人が起点になった。中山がボールホルダーに寄せてボールを奪取。目の前にいた三笘に展開する。背番号13はペナルティエリア内に鋭く侵入し、ラストパスを中に送った。その瞬間、ファーから飛び込み、敵の裏を取った伊東が左足で合わせる。喉から手が出るほどほしかったゴールが生まれた。
「薫が仕掛けて入ったところにだけはしっかり走り込んでいこうということだけ考えていた」と2戦連続決勝弾を叩き出した快足アタッカーはしてやったりの表情を浮かべた。
こうして日本代表は後半戦最初の関門を突破したわけだが、若い世代がチームを救ったことは大いなる希望に違いない。10月7日のサウジアラビア戦で2敗目を喫した後、森保監督が若手抜擢に意欲を見せ始めたことがその流れを加速させている。10月12日のオーストラリア代表戦では田中碧が値千金の先制ゴールを叩き出して停滞感を打ち破り、今回の2連戦でも中山、三笘が結果を出したのだから、ようやく「1チーム・2カテゴリー」の成果が出始めたと言っていい。
最終予選突入後の長友や大迫勇也らベテラン勢のパフォーマンスを見ていたら、もっと早く東京五輪世代を積極起用してもよかったはずだが、これまでの積み重ねを重んじる指揮官は慎重な姿勢を取り続けた。が、序盤に苦戦を強いられたことが、結果として新たな戦力を抜擢するきっかけになったのなら、それはそれで悪くない。固定メンバー起用が問題視されがちだったチームに風穴が開き始めたことは、先々を考えても大きな意味を持つはずだ。