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監督としてのシャビはグアルディオラのコピーではない。スタイルに変化を加えた人物とは?【バルセロナ新監督の哲学・後編】

text by 結城康平 photo by Getty Images

ついにシャビがバルセロナの監督に就任することが発表された。かつての象徴は危機に瀕したバルセロナを救うことができるのか。母国から遠く離れたアル・サッド(カタール)での采配から、シャビの哲学に迫る。好評発売中『フットボール新世代名将図鑑』から、凱旋の時を見極めるバルセロナ最後の希望として収録した「シャビ」の章を一部抜粋で公開する。今回は後編。(文:結城康平)

シャビはグアルディオラの戦術をコピーしているわけではない

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【写真:Getty Images】

 特に相手がリトリートした場合に崩しの基本となるのが、ワイドでの突破だ。彼はWGの仕掛けに重きを置く傾向にあり、中盤がそれをサポート。ワンツーなどで突破を狙うパターンもあるが、どちらかというとアイソレーション的に片方のサイドに寄せておいて、逆サイドでボールを受けた選手が個人で仕掛けるようなプレーが多い。そういった意味では、WGの質的優位は重要だ。

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 最初のプレッシャーを突破すると、SBやCBは中盤としてプレーすることになる。2枚をカバーリング要員として後方に残すことにはなるが、それ以外の2枚は攻撃参加が可能。そうなると、[2-3-5]のようなシステムになることが多い。

 ここで問題視されるのが、多くの選手を前線に置くことに伴う渋滞だ。結果的に攻撃の選手が増えると、相手もリトリートしてくることが多い。そうなれば、結果的に使えるスペースは減ってしまう。そのような問題を解決するには、短いボールと長いボールを組み合わせることで「相手を動かしていく」必要がある。短いボールだけでは、相手の移動距離は短いままになってしまうからだ。

 その解決策として、別格のプレーを披露しているのがサンティ・カソルラだ。シャビのチームに加わったスペイン屈指の実力者は、カタールの地で水を得た魚のようにプレーしている。その判断スピードと技術に定評があった彼がポイントとなっているのは、ビルドアップの時にボールに寄っていく動きだ。カソルラは距離を変えながらボールを受けることで駆け引きをしており、パスの強さを変えさせることでリズムを作っていく。

 チームのビルドアップにおいて、ボールを蹴ることだけではなく「ボールを受ける」ことも同じように重要なことを、スペイン育ちのMFは完璧に理解しているのだ。ゲームにおけるリズムを彼が刻んでいくことによって、シャビが追い求めるスタイルに「変化」が加わっているのは大きい。

 そのカソルラは、シャビの監督としての資質を認める1人だ。

「彼はラ・マシアの出身者であり、グアルディオラのフットボールを経験している。ただ、彼は単にその戦術をコピーしているわけではない。彼は自分だけのマネジメントスタイルと戦術的なアイデアを持っており、私は将来彼が偉大な監督になることを確信している」

『フットボール新世代名将図鑑』


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