ついにシャビがバルセロナの監督に就任することが発表された。かつての象徴は危機に瀕したバルセロナを救うことができるのか。母国から遠く離れたアル・サッド(カタール)での采配から、シャビの哲学に迫る。好評発売中『フットボール新世代名将図鑑』から、凱旋の時を見極めるバルセロナ最後の希望として収録した「シャビ」の章を一部抜粋で公開する。今回は前編。(文:結城康平)
カタールで実践する攻撃の原則
シャビは最初、自分が慣れ親しんだフォーメーションである[4-3-3]でチームの構造化をスタート。しかし、[3-4-3]というフォーメーションも興味深いオプションだ。シャビのベースとなるのは、クライフやグアルディオラが好んだいくつかの基礎的な原則になる。両SB(WB)は、攻撃的なポジションを保つ。
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この目的は、相手のプレッシャーラインを迷わせることだ。SBがCBと並んでしまうと、1つの問題として「斜めのパス」が難しくなる。同時に三角形を構築することが難しいので、基本的にSBはポジションを上げていく。中央の選手はボールを前進させるという目的を担っており、MFはライン間に侵入していく。彼らのところにパスを届けるのは、シャビにとって「最初の目的」だ。
最近はWBやSBとして、カタール最高のアタッカーの1人として名高いアクラム・アフィーフを起用しているのもシャビの工夫だ。超攻撃的なSBを置くことで、彼は支配的なフットボールを目指している。SBへのパスから三角形を構築し、そこでコンビネーションプレーを仕掛けていく。
シャビやイニエスタが好んでいた「間のスペース」にボールを届けることで、相手の守備陣を迷わせることも重要だ。彼らは相手のMFが味方にプレッシャーをかけることを封じる「足止め」(相手のマーカーを引き受け、味方の選手へのプレッシャーを軽減する)の役割も担っており、彼らが正しいポジションに立てれば相手は積極的にプレッシャーを強められない。「ボールの受け手」であり、「足止め役」。この2つの役割はシャビのフットボール哲学における根幹であり、中盤の選手は常にそれを意識しながらプレーしている。
正しいポジションにいればボールを受けられるし、相手にとっても嫌な存在になる。これこそが、シャビによる「位置的優位」の解釈なのだ。同時に「9番」となる中央のFWは、低い位置でボールをもらおうとする。この動きはシャドーの位置から裏に抜けようとする動きと組み合わせられるので、どうしても「9番」のマークは甘くなる。このように縦の動きに加え、サイドの選手は幅を取ることでサポート。縦と横を最大限に広く使っていくプレーには、相手の守備陣を広げる効果が期待される。
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【了】