左ウィングバックを経験することの意義
現在4連勝中のユニオンは、昇格組ながらリーグ首位を走っている。チームをけん引するのは、間違いなくヴァンゼイルとFWデニス・ウンダフの2トップだ。前者はリーグ戦で9得点5アシスト、後者は8得点8アシストを記録しており、13節終了時点の得点ランキングでも3位タイと6位タイにつけている。
ベルギー国内でも最強2トップと目される強力なコンビを補佐する役目として、三笘にかかる期待は試合ごとに大きくなってきている。オイペン戦とヘント戦の間に行われた国内カップ戦では、相手にリードを許し、どうしてもゴールが欲しいタイミングでテウマやウンダフとともに同時投入された。
中心選手たちが休息を与えられたカップ戦で試合の流れを変える役割を託されたということは、すなわち三笘も主力として認められ、大事にされていることの証明と言えるだろう。ハットトリックを決めたセラン戦からの約2週間で、チーム内における立ち位置は大きく変わった。
左ウィングバックとしてプレーし続けることで、どうしても求められるのが守備への貢献だ。もし今後もウィングバック起用が続けば、三笘が苦手としていた対人守備やディフェンス時のポジショニングなども時間とともに改善されていくだろう。
前線でボールがくるのを待って、1対1を仕掛けるだけの選手にさらなるステップアップの道はない。今後は三笘のドリブルに対する分析や対策が進むだろうし、強豪相手の試合では自陣に押し込まれる時間が長くなって、ほとんど前向きにボールを持たせてもらえないかもしれない。
そうした難しい状況になっても、一瞬の加速と緩急でどの方向にも驚異的な突破力を誇るドリブルをコンスタントに結果へつなげるには、攻守に適切なハードワークができることを示さねばならない。その意味でウィングバックとしての経験は決して無駄にならないはずだ。
泥まみれになりながら体を張って守備に奔走し、そのうえで最大の武器であるドリブル突破の試行回数が減っても成功回数を減らさず、チームの勝利に結びつけていく。
ユニオンで定位置を確保しつつある三笘にとって、左ウィングバックという新境地は欧州でキャリアを形成していくにあたって極めて重要な挑戦になるのではないだろうか。
(文:舩木渉)
【了】