ローマの守備は怖くなかった
今季のミランはハイプレスとの相性が悪いという弱点がある。とくにチャンピオンズリーグ(CL)のリバプール戦、そしてポルト戦ではそのウィークポイントが前面に出てしまい、内容的にもかなり厳しい敗戦となってしまった。
しかし、この日のローマは上記2チームのような守備を行わない。4-4-2でセットし、ライン間をコンパクトにしながら、自陣での対応を基本としている。攻撃時の狙いは、相手を引き込んだところでタミー・エイブラハムやニコロ・ザニオーロらの走力を活かすことにあった。いかにも、ジョゼ・モウリーニョ監督らしい采配である。
ただ、ミランにとってそれは全く怖いディフェンスではない。案の定、スタディオ・オリンピコにおけるアウェイチームの攻撃は実にスムーズだった。
エイブラハムとロレンツォ・ペッレグリーニの守備時ツートップに対しては、シモン・ケアーとフィカヨ・トモリ、そしてダブルボランチの一角が絡むことで数的優位を作り出している。そしてボールを動かすことで相手も動かしながら、着実にラインを押し上げていた。
その中で躍動したのはイブラヒモビッチだ。最前線に留まるだけでなく、下りてボールに絡む同選手は、ローマDF陣になかなか捕まることがなかった。そのためミランは、イブラヒモビッチにパスが収め、他の選手がそこを追い越す、あるいは彼が空けたスペースへ入ることによって、ローマの守備におけるギャップを作り出す場面が多かった。
この日のイブラヒモビッチはFKから得点を奪っただけでなく、PKを奪取、そしてゴール取り消しにアシスト取り消しが一つずつあった。これだけでも、ローマがいかに彼のマークに苦労したか、またいかに彼を使われてしまったかがわかるだろう。
ハイプレスに苦しむことなくビルドアップをスムーズに行い、イブラヒモビッチを活かしてそこからのコンビネーションで崩し切る。ミランにとっては、理想の形を作り出せたと言える。反対にローマは、もっと攻撃的なディフェンスを仕掛ける必要があったのかもしれない。イブラヒモビッチの躍動が意味するものは、決して小さくないだろう。