監督解任は懐疑的
オランダ人指揮官にとって不運だったのは、この自身の命運を決した試合に、何人かの主力を欠いて臨まなくてはならなかったことだろう。フレンキー・デ・ヨングはクラシコで負傷。そして1度はバジェカーノ戦に向けた遠征メンバーに招集したアンス・ファティは、右膝の痛みで遠征を見合わせることに。そしてペドリは依然として離脱中…。もちろん結果論に過ぎないが、この3選手が先発に揃っていたら、怒涛のプレッシャーの中でも主導権を手繰り寄せ、敗北を免れることができたかもしれない。
そういった意味では、このタイミングでの“解任”は適切だったのだろうか。もちろん、ただでさえ台所事情が火の車の状態で、これ以上の財政面でのダメージを避けるためには来季のCL出場権獲得は必須である。そのことを踏まえれば、これ以上、上位との差を引き離されるわけにはいかないと上層部が考えても無理はない。
しかし、メンバーが十分に揃っていない段階で、後任も見つかっていないのであれば、もう少し様子を見ても良かったのではないか。ペドリは11月下旬に復帰の見込みだという。その頃にはフレンキーも再び戦列に加わり、アグエロもさらに調子を上げている可能性もある。また、ニコ、ガビ、ファティら若手の成長には、どうしても時間が必要だ。リーグ戦は2連敗となったが、その前のバレンシア戦のサッカーは悪くはなかった。
クラブの遺伝子を知り尽くすOBのシャビ・エルナンデスを待望する声は根強いが、果たして監督をシャビに任せれば、魔法を掛けられた不格好なかぼちゃが途端に豪華な馬車に変身するように、バルセロナは瞬く間に強さを取り戻すのだろうか。
その意味で、この交代劇は危うい可能性を秘めている。もし、クーマンの後任がバルセロナを上位に引き上げることができなかったら――、クラブの“暗黒期”が始まるのかもしれない。
もう始まっているのかもしれないが。
(文:本田千尋)
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