ユベントスが幸運を引き寄せたわけ
そしてイタリア人指揮官は65分に動く。マインドを攻撃的に切り替え、クアドラードに代えてディバラを、クルゼフスキに代えてキエーザを投入。布陣を[4-4-2]に変更し、ディバラはアルバロ・モラタと2トップを組み、キエーザは右サイドに入った。このフレッシュなキエーザに対して、ペリシッチは守備に追われることになり、72分にドゥムフリースと交代。1-0とリードしていたこともあって、今度はインザーギ監督のマインドが守備的に切り替わったのである。
この両監督のマインドの入れ替わりが、「究極的には」ユベントスに“幸運”を引き寄せたと考えられないだろうか。もちろんペリシッチは見た目にもくたびれ果てていたし、インテルの攻撃そのものが機能していたとは言い難かったので、残り時間を考えてインザーギ監督が1点を守りに行った選択は、何ら責められるべきことではないだろう。ドゥムフリースがA・サンドロの足を蹴ったとする判定も、なかなか際どいものであり、5バックで固めるインテルの守備組織が崩されたものではなかった。
しかし、結果的にではあるが、攻撃的精神というイタリアらしからぬマインドがあったからこそ、千載一遇のPKというチャンスが巡ってきたのである。そのメンタリティは何より、C・ロナウドという依って立つ選手がいなくなった状況でも、もがきながらチームとして新たな形を模索し、アイデンティティを獲得していこうとするマインドとも言い換えることができるだろう。
フットボールに神様がいるとすれば、そのユベントスの独立自尊の精神を見逃さなかったのではないか。C・ロナウドがいなくなったことで、チームとしてスケールダウンは否めない。しかし、C・ロナウドが加入した現マンチェスター・ユナイテッドと現ユベントスを比べて、どちらがチームとして機能しているだろうか。
アッレグリ監督が振り返るように、ボール奪取後の攻撃面で課題はある。インテルとの試合をドローに終えてアウェイで勝ち点1を手にしたとは言え、首位ミランとの勝ち点差は10。まだ9試合を終えた段階だが、今季のスクデット獲得は難しいかもしれない。
それでも、守備的なマインドの中でも攻撃的なマインドを発揮していくことで、試合毎に「一歩前進」していくことに繋がり、C・ロナウドを失ったユベントスは、一時的な痛みを乗り越えて生まれ変わることができるはずだ。
(文:本田千尋)
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