勝利を決定づけたPK奪取
【写真:Getty Images】
攻撃を再開したセルティックは、左サイドを上がってきたジョンストンへ展開。ペナルティエリア内で相手に囲まれた22歳のウィンガーは強引にシュートを放つが、ブロックされてしまう。だが、チャンスはここで終わらなかった。
ジョンストンのシュートのこぼれ球に背後から古橋が飛び込み、ジョタとのコンビネーションで抜け出そうとする。相性抜群の“相方”から絶妙なバックヒールパスを受けた日本人ストライカーは、ペナルティエリア内に入ったところで相手ディフェンスに倒された。そして主審はセルティックにPKを与えた。
実はセンターサークル付近からジョタがボールを運んだ時点で、古橋も左サイドからゴール前に走り込もうとしていた。しかし、スピードが上がりきる前に、ボールのないところでセント・ジョンストンのDFエフェ・アンブローズに倒されており、ゴール前に到着するのが遅れていたのである。
一度は痛んでピッチに転がったものの、すぐに立ち上がって他の全ての選手の意識の外から混戦地帯に飛び込んできた古橋は、見事なコンビネーションから勝利を決定づけるファウルをもらった。PKはDFヨシップ・ユラノヴィッチに譲ったが、ストライカーポジションに入った背番号8の日本人FWは大仕事をしたと言っていいだろう。
現地紙『ヘラルド』や『スコッツマン』などによれば、ポステコグルー監督は試合後に「私はストライカーがどんなものか知っている。ゴールを決めない限り、気分のいいストライカーは世界のどこにも存在しない。特に新しいクラブや環境に来た時はなおさらだ」とギアコマキスの働きぶりを称えたという。
そして「オプションが多すぎて悪いことはない。攻撃陣にこれだけの選択肢があるのはいいことだ」とも。指揮官はようやく結果を出した長身のギリシャ代表ストライカーを今後もオプションの1つとして考慮していくようだ。
ただ、何と天秤にかけるかも考えなければならないだろう。現状、チームのトップスコアラーは古橋であり、コンスタントに結果を残せているエース級の選手の持ち味を消してまでギアコマキスの起用にこだわる意味があるのかには疑問が残る。
オランダ1部リーグの得点王とはいえ、ギアコマキスは古橋とポジションを争う直接のライバルではなく、あくまで戦術オプションの1つ。今後もその方向性で起用していくべきだろう。
古橋にとっては、現地で加入が噂になっているFW前田大然の方が、将来的に重要なライバルとなる可能性を秘めている。2人とも「自分たちのサッカー」におけるストライカー像にぴったりな人材だ。
セント・ジョンストン戦は、改めて古橋の戦術的な重要性が明らかとなる試合だった。そして「もっと良くできるはず!」なのも間違いない。セルティックはリーグ戦3連勝で、ようやく“定位置”に戻りつつある。
(文:舩木渉)
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