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Jリーグ 3年前

鹿島アントラーズは「キレイなサッカーをしてもしょうがない」。希望をつなぐ背番号8の黒子の働きとは?【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「キレイなサッカーをしていてもしょうがない」



 2020年8月の内田の引退試合の際にも「篤人さんも先輩たちの背中を見て育って、それを表現して鹿島に還元してくれていたと思いますし、本当に僕もずっと身近で肌で感じて、行動や言動、すごく心に響く言葉をたくさん見たり聞いたりしてきました。鹿島の先輩たちの姿というのは受け継がれていると思います」としみじみと語っていた。

 偉大なレジェンドからクラブの未来を託された人間が前節・横浜FC戦後に掲示されたサポーターの横断幕を間に当たりにしたら、危機感を覚えないわけがない。

「それが素直なサポーターの感情。変えられるのは僕ら選手。まずは自分たちが勝たないといけない。どんなにキレイなサッカーをしていてもしょうがない」。上田は全員の思いを代弁していたが、土居はそれをピッチで体現しようとゴールに突き進んでいた。

 飽くなき闘争心と勝利への渇望がFC東京撃破という形で結実したのは朗報だ。が、彼らには重要な戦いが残されている。27日には今季唯一、残されたタイトル・天皇杯のかかった川崎戦が控えているし、J1の3位以内を巡るリーグ終盤5戦もある。24日に第33節が行われる3位・ヴィッセル神戸、5位・名古屋グランパスに比べると鹿島の置かれた状況は厳しいが、かすかな可能性を信じて勝ち星を積み重ねていくしかない。

 昨季も最終節でセレッソ大阪に勝てず、ACL出場を逃している。その苦い経験を年長者の土居は忘れてはいないはず。だからこそ、前線のリーダーとして若手や外国籍選手たちをけん引しなければならない。

 背番号8の本当の戦いはここからだ。

(取材・文:元川悦子)

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