見出しつつあるゴールへの道筋
あくまで「自分」にフォーカスしつつも、マリノスの中に入った杉本は「チーム」の中で機能することによって自らの結果にも結びつける道を見出しつつある。加入当初は最前線のセンターFWに入りながらポジションが安定せず、ボールに関わろうと中盤に降りてくる回数が多かったり、クロスに対して飛び込むポジションを間違えたりして、周りの選手たちから指摘されることも多かった。
例えば低い位置でパスをさばいた後の展開が早すぎて、肝心のフィニッシュの局面に間に合っていない場面も散見された。また、マリノスではサイドからのクロスに対し、センターFWは「まずニアサイドに飛び込む」という約束事がある。低くて速い弾道のクロスを狙うがゆえ、もしニアサイドでセンターFWが触れればワンタッチで1点というケースはこれまでにも多くあった。
一方、センターFWがニアサイドに走り込むことでマークを引きつけ、逆サイドから遅れてゴール前に入ってくるウィングや、2列目から飛び出してくるMFにスペースを与える役割もある。もしクロスが後ろに流れても、逆サイドのウィングや2列目の選手が合わせれば「1点」に変わりはない。決してセンターFWがゴールを決めることを絶対とせず、チームとしていかに効率的にゴールを奪って勝利につなげるかが最優先事項だった。
以前は「健勇! ニアだよ!」と周りから強く指摘されることもあったが、今の杉本は潰れ役もいとわない。再起のチャンスを与えてくれたチームで、どんな形であっても勝利に貢献するんだという意識の強さは彼自身の言葉からもうかがえる。札幌戦の後、こんなことを言っていた。
「スタメンで出場したのは今のところ(ホームの)名古屋グランパス戦だけ。やっぱり途中出場って、試合の流れであったり、負けている、勝っているというのを考えながらやるので、見ている人から(考える)よりも、やっている方が難しい。その中で自分は結果が求められているので、結果を残さなければいけない。
(3得点は)不思議なことに全部ヘディングなので、マリノスで自分の武器を、1つのオプションとして作れているんじゃないかなと思いますし、もっともっとそれを生かしたいですし、チームに生かされたいと思うので、続けてやっていきたいなと思います」